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『高校生ホテル』太田純平

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「今の二年と同級生になるんだぞ?」
「!」
「今のクラスメイトがお前の先輩になるんだぞ? 同窓会に呼ばれないんだぞ?」
「……」
 さすがに気持ちが揺らいだ。留年したら今の二年生とタメ。年下と同じ教室で授業を受ける。そんなの絶対に嫌だ。だいたい今の同級生が俺の先輩になるなんて――。
「チャンスをやろうか?」
 俺の動揺を感じてか、先生が言った。
「木村ァ。お前一回、飲食ブースで働いてみろ」

「3」

 このホテルのウリは主に三つある。一つは低料金である事。もう一つはスタッフが高校生である事。そして最後の一つは、一階のフロア全体が、学園祭を模したようなフードコートになっている事である。
 ラーメン、たこ焼き、カレーライス――何でもある。フードコートは泊まり客でなくとも利用する事が出来るから、その珍しさも相まって、ひっきりなしに客が訪れるのであった。
 俺はその飲食ブースの中で、「ジュースバー」のスタッフとして働くよう命じられた。店構えは屋台でいうところの、かき氷屋のような感じである。
 俺は何も分からないまま「ジュースバー」のカウンターに立たされた。目の前には虹色をイメージしたのか、七つのミキサーが並んでいて、それぞれに液体と生のフルーツがゴロゴロ入っている。客が来るとそのミキサーを回し、氷を入れ、フレッシュジュースとして提供するらしい。
 スタッフは俺を含めて三人である。面倒な事に二人とも女子。一人は裏でフルーツをカットしたり仕込みをしていて、もう一人は俺の隣に立って、ぼそぼそと仕事内容について教えてくれている。
 この、隣に立っている女。こいつも正直、学校での地位は相当に低い。名前は確か渡辺だ。いわゆるガリ勉タイプの女子で、テスト以外では全く光を放たない。俺は日課のようにこいつの上履きを隠していた時期もあるから、仕事について教わるのが何だか罪深い気がした。どうせ俺の事なんか乱暴者としか見ていないだろうに、メモ用紙に仕事内容を図式化して書いてくれたり、なるべく俺の負担が少なくなるよう、二対八くらいの割合で仕事を振ってくれたり――。
「いらっしゃいませ~」
 やって来た客に渡辺が言った。俺がカウンターに立ってから一人目の客だ。留年の脅しがあるから、さすがにもう後には引けない。
「いらっしゃいませ~」
 仕方なく客に挨拶をした。渡辺が客に注文を訊く。
「じゃあ、トロピカルジュース、Mサイズで」

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