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『ファニーホテル』南りり

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「若者を見ると、どうしようもなく焦るんだ。自分のセンスはもう古いって、暗に言われているような気になる。新卒が入って来る時期は嫌だよ全く。それでも一応社内での地位はある。俺は自信のなさを見せられる立場じゃない。しんどい。」

 宿泊仲間が打った文章のようだ。私は、すぐさま何かを返そうとしたが、文字を打ち込むことができない。すると、画面にこんな文字が現れた。
「バーで、皆さんでお話しすることができます。最上階までお越しください。」
 高校生になった私は、足取り軽く部屋から駆け出していた。

 バーでは、株価表示板のようなものに沢山の人が思い思いに呟いていた。
 皆、それぞれカクテルやウィスキーを飲みながらスマホの画面を触っている。誰が誰の投稿か、分からない。

「妻が家を出て行った。」

「親をどうしても許せない。介護するべきだと分かっている。でも正直葛藤がある。」

「人前で顔が赤くなるんだ。本当器の小さい奴だよな。」

 もしかしたらその悩みを抱えているのは目の前にいるカウボーイのお兄さんかもしれないし、ソファで飲んでいるスーツ姿のニートの人かもしれない。誰もが、表情を変えぬまま思い思いにそれぞれの苦しみを打ち明けている。ただ、分かることは、そんな悩みを抱えて生きているのはこの小さなバーにいる誰かだということだった。誰もが、そのことを分かっている。だから、それに対するコメントは自然と優しいものとなる。

「辛かったですね。」
「許せなくてもいいんですよ。」

「コンプレックスもあなたらしさです。」

 なんて優しい場所なのだろう。東京は、案外こわいところではないのかもしれない。

「どれだけ有名になっても、好きな人には愛されません。」

 次々と、新しい投稿が上がっていく。私は、とりあえず誰かに返信を送ることにした。

「つらいですね。なぜ愛されていないと思うのですか?」

 すぐに返信が帰って来る。

「ずっと一緒にいたのに、気持ちに気づいてもらえなかった。有名になれば愛されるって思ってがんばったけれど、好きな人からは一向に連絡が来なかった。あんなに一緒にいたのに、そんな程度だったんです。こんなこと言うの、みっともないですよね。」

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