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『雨の日に』真銅ひろし

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 コーヒーのグラスを下げる。
 今日も一日が終わった。
 特に変わった事などもなかったが最後のお客だけがちょっと変わっていた。
 すべての片付けが終わり店内の電気を消す。
 暗くなった店内はとても寂しく、雨の音だけが際立って聞こえてくる。

 バタバタバタバタバタバタバタ。

 数時間前と一緒で窓を打ち付けるように降っている。
 これから帰って寝るだけだがどうしても足が重たい。妻はもちろん先に寝ているだろう。
 おもむろにカウンターに座る。
 真っ暗な店内を少し眺めたあと、カウンターのみ電気をつける。
「・・・。」
 グラスに手をかけ、氷を入れウイスキーを注ぐ。
 タクシーで帰れば問題ない。まっすぐ帰ったところで待ってくれている人間などいないのだ。
 コンコンコン。
 ノックの音がしてドアを見るとさっきの男の人が申し訳なさそうに立っている。
「・・・どうされました?」
「すみません、傘を忘れてしまったと思うんですが。」
 男性はそう言って自分が座っていた席に目をやる。そこには床に置かれている透明の傘があった。
「これですか?」
「すみません、ありがとうございます。」
 傘を手渡す。
「・・・。」
 男性が何故かジっとカウンターを見ている。
「どうかされましたか?」
「いや、一人であそこのカウンターで飲んでるのカッコいいなあと思って。」
「ああ・・・。」
 何か浸っていると思われただろうか。格好悪い所を見られた。
「あの、私も一緒に飲むのはご迷惑ですか?」
「え、」
 まさかの問いかけが来た。
「いえ、別に。」
 そう答えると男性は恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。
「すみません、実は今日人を待ってたんですが、全然来なくて。」
「そうですか。とりあえずカウンターにどうぞ。」
 男性をカウンター席に促す。
 やはり誰かを待っていたのか。

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