彼女か?
フラれたのか?
逃げられたのか?
あー、嫌だ。勝手に色々と想像されてんだろうな。でも否定は出来ない。実際に人を待っていて来ていないし、イコールでフラれたと言うことになる―――――。
「ダメだとは分かってます。でもどうしても諦められません。明日の夜7時に駅前のホテルのbarで待ってます。」
「・・・。」
「待ってます。少し会話してくれるだけでもいいんです。」
彼女に投げかけた言葉。
会社の先輩にあたるその女性は芯があるとても魅力的な女性だ。上司も含め彼女に好意を寄せる男は多いが、社内で誰かと付き合っているという噂は聞いたことがなかった。
「付き合って貰えませんか。」
会社ではまだまだの自分。告白したところで絶対に成功するわけがないのは分かっていたが、どうしても思いを伝えたくて告白した。
「ごめんね。」
予想通りの答えが返って来た。けれどこれで終わりに出来るほど自分の気持ちは小さいものではなかった。それから食事に誘ったり、遊びに誘ったりした。それくらい自分は彼女に夢中だった。
『ごめんね。』
『ごめんね。』
『ごめんね。』
『・・・。』
メールでの誘いをことごとく断られ、最後には返答がなく無視をされた。
そして今回最後のお誘いをした。メールではなく直接伝えた――――――。
「・・・」
困った表情の彼女を思い出しながら外のどしゃ降りの雨を眺める。
夜だし雨だし人が歩いている事すら分かりずらい。
本当は最初の30分で来ないのは分かっていた。それでも「もしかして」という淡い期待を抱きながら待ち続けた。しかし、時間がたつにつれて淡い期待が落胆へと大きく変わっていった。
「・・・。」
このまま諦めて帰ってもいい。
けれど、少しの希望を棄てたくはないという情けない自分もいる。
「・・・。」
ならばいっそ、お店から追い出されるまで待ってみよう。
というヤケクソな気持ちになっていた。
カチャカチャカチャ。
カウンターを見ると店長らしき男性が閉店に向けて片付けをしている。
この状況は辛すぎる。