なんて言ったらどうなるだろうか?
「は?」
と怪訝な顔をされて終わりだろう。
「お待ち合わせですか?」
こう言ったらどうなる?
「は?」
これも怪訝な顔をされて終わりだろう。何時間もここにいるのだ、もし本当に待ち合わせなら嫌味の以外の何ものでもない。
23時30分。
閉店まであと30分。
「ありがとうございました。」
カップルは清算を済ませると寄り添うように帰って行った。この雨だ、きっとホテルに泊まっていくのだろう。
「・・・。」
しかし飽きることなくずっと話していた。3時間位だろうか、よくもそんなに話題があるものだと感心する。
少し分けてくれればいいのに。
そしたらもう少し妻との関係も軟化するかもしれない。
「はぁ。」
虚しくため息をつく。そんな事できるわけがない。
そして店内は男性と自分しかいなくなってしまった。
静かな店内。
激しい雨が窓を打ち付ける。
バタバタバタバタバタバタ。
気がつけば二人とも外を見ている。
二人の心はこの雨のように激しく打ち付けられているのだろうか。
と、ちょっと詩的な事を思ってみたが現実はなんて事はない。離婚を突きつけられた男と、何の用事か知らないが何時間もコーヒーを飲んでいる男。と言うだけの話。
24時閉店なので、ちょこちょこ片付けを始める。
腕時計に目をやる。
23時40分。
あー、これはもう絶対に来ないだろうな。
お店もなんか片付けを始めちゃってるし。自分はコーヒーしか飲んでいないし。
約5時間だぞ、5時間。
さっきまでイチャイチャしていたカップルも帰っちゃうし、お店には店長らしき人しかいない。
二人きり。
かなり気まずい・・・。
早く帰れよ。
いつまでコーヒー飲んでんだ。
誰待ってんだ。