
小学校の図書館で親しくなった勝野と宮木。好きな本や将来の夢を語り合う仲だったが、その友情も勝野の転校によって途切れてしまう。やがて人生の岐路に立たされた勝野は、かつて交わした約束を思い出し、長年音信不通だった宮木に会いに行く。
お寺の副住職である友人から頼まれてリサイクルショップの二階に住まわせてやった福ちゃんは大学生。アルバイトとして雇うと、そこそこだった店が繁盛するようになる。座ったまま手招きする招き猫と言うよりは、芸をして客を呼ぶ狸のようだった。
弱い者から金を巻き上げていた不良少年、雄斗は、ある時、カモにしようとしていた少年から、「Vライバー」なるものの話を聞く。「画面の向こうから、自分の声に応えてくれる」というその存在に妙に心惹かれた雄斗は、バーチャルの世界への扉を開く。
大晦日の夜。数年ぶりに息子が実家へ帰って来るとあり、父の健作はそわそわしていた。ご飯も食べずに妻の郁子と待っていると、ようやく息子の大輝が帰って来た。健作は、大輝が風呂に入っている隙に、彼の財布へこっそりお金を入れてやろうとする。ところが、彼の財布から謎の大金が出て来て――。
評価を得られぬまま師匠と死に別れた二ツ目の噺家・蝶福亭半角。師匠の全角が遺したという手拭いを受け取った半角の前に、死んだはずの全角本人が現れる。半角は師匠から一年以内に真打ちになるよう命じられる。
大切な人を失くして生きる気力も失った“私”の元を毎夜ごとに訪ねてくるものがいる。生きている人間で、訪ねてくる人物に心当たりはない。玄関の向こうにいるのは誰なのか、どういう存在なのか。その身に喪失感しか持たない“私”が扉を開けた先にあるものとは。人間が“生きている”ということの意味を探す、京都府の伝承「幽霊飴」を素材にした二次創作話。
大切な青紫色の手袋を片方だけ無くした。それは優斗かからもらったばかりのプレゼント。手袋を落としたであろう近所のコンビニ前へと急いだが、見つからなかった。翌日、仕事からの帰り道にコンビニ近くの路上で佇むおばあさんは、なぜか私が無くしたはずの手袋をはめているではないか。
瀟洒な街で飲食店を開いた祐介は、自分の店で中学の同窓会を開く運びとなる。起案したのはかつて彼が思いを寄せた真由美であった。会の後、ひょんなことから彼女は真由美ではなかったことが判明する。彼女は誰だったのか、何のために変装したのか、祐介は彼女を追う。
待望の赤ちゃんを身ごもったものの、ダウン症のようだと医師に指摘された私。お腹の子が同じ疾患である倫子と親しくなり、ある雨の午後に辻堂という奇妙な質屋に入る。そこには福の物として「こぶ」が置いてあり、二人も質草として、お腹の子にくっついているよけいなこぶを取って預かってもらう。