『人間ドッグ』
高平九
(『桃太郎』)
人事担当の尾谷勇児は井坂きぬの履歴書の趣味欄に「人間ドッグ」と書かれているのを見てたちまち彼女のファンになった。だが、役員面接の際、きぬに「人間ドッグ」とは何かと質問したことが原因で離島の関連会社への出向を命じられてしまう。やがて勇児ときぬは結婚し順風満帆な人生を送るのだが……。
『終わる時、新しい時』
いいじま修次
(『姥捨て山』)
超高齢化が進んだこの国では、次の世代が生きる為にある政策を実行させた。それは定めた老齢を迎えた者が、海を挟んで拡がっている領土に送られて余生を過ごすというもの。その領土には、苦しみを味わうことなく命を消せる装置が置かれていて――
『仏斬り』
N
(『恩讐の彼方に』)
ある武士と人妻が駆け落ちを企てる。しかし女の夫に気づかれ殺してしまう。二人は逃げ出すが、女は病気ですぐに他界し、残された男は生きる意味を求めて出家の道に入り、修行の末辿り着いた地で石仏を彫り始めた。月日が流れ、大石仏が完成間近となったとき男の元へ仇討ちの男が現れる。
『やまない、やめる、やめた』
真白
(『羅生門』)
高校を辞めることにした女生徒は、学校で雨宿りをしていた。この先のことはまだ何も考えていない。教室に忘れ物を取りに行くと、とある人物と対峙する。恐怖と好奇心とが交錯するなか、相手の突然の告白を受けた女生徒に、ある勇気が生まれる。