『豪雨』
中村市子
(『蜜柑』)
上司とのW不倫がばれ35歳にして仕事も家族も住む家も失った「私」は、死に場所を求めて実家に向かった。実家では父が、汚く太った野良猫を「ブン太」と名付けて餌付けし世話をしていた。ブン太は図々しく愛嬌もないため「私」は毛嫌いするのだが、ある出来事がきっかけでその気持ちが一変する。
『口うるさいレストラン』
ウダ・タマキ
(『注文の多い料理店』)
夜の街。和樹が辿り着いたのは少し不気味な雰囲気の洋館だった。そこは、どうやらレストランのようだ。本来なら入り辛い佇まいではあるが、和樹は吸い込まれるように店に入った。しかし、店内は同じような部屋ばかりが続き、いつになっても食事にありつくことができないのだった。
『朱美の物々交換』
吉岡幸一
(『わらしべ長者』)
人見知りを克服したい。お昼ご飯を一緒に食べてくれる友達を作りたい。高校三年生の朱美は極度の人見知りのため友達がいない。朱美は休日の駅前にHBの鉛筆を一本持って立っていた。人見知りを克服するために、昔話のわらしべ長者の真似をして物々交換を始めたのだった。道行く人に声をかけていく。
『ある日、図書館で』
石咲涼
(『三枚のお札』)
毎日が慌ただしく一杯いっぱいな主婦のまりえは、いつも憤りや不安を感じている。ある日、図書館の一角で開かれていた絵画展で優しそうなおばあさんに会い、願い事が叶うという三枚のお札をもらった。そのお札を使おうか迷いながら過ごすうちに気持ちに変化があらわれるようになる。
『あきらめよう』
洗い熊Q
(『諦めている子供たち』)
ある通りで偶然見かけた路上演奏をする彼女。ただ彼女は一向に歌い出そうとはしなかった。
『アリス盗り』
淡島間
(『不思議の国のアリス』)
隣の高校のアリスが盗まれた。次に狙われるのは我が校だ。図書委員たちは、怪人・アリスさらいから自分たちのアリスを守るため、団結を誓った。しかし、小林委員長は仲間を頼ろうとせず、一人で気負い、憔悴していく。彼女は奴と因縁があるらしい。委員たちの心がバラバラになる中、奴はやって来た。
『帽子の底』
百々屋昴
(『王様の耳はロバの耳』)
高校生の主人公は、コンプレックスであるロバの耳を帽子で隠しながら生きている。しかしある時、ロバの耳を隠さず生きている人の存在を知り自身もネット上に耳を晒す。その後現実との格差から一度は耳を切り落とすが、最終的には耳のある自分を受容する。
『月一会議のシンデレラ』
真銅ひろし
(『シンデレラ』)
私の幼稚園では月に一回会議を行う。その会議の中で「シンデレラの読み聞かせをやめたい」と提案する先生がいた。園内で一番のベテランである理子先生だ。「美人で一発逆転」の内容が教育に良くないと言う。この提案により次の会議までにシンデレラの是非を考える事になった。
『Who is ぷりんせす』
藤井あやめ
(『シンデレラ』)
小学生のミツルは、今日も仲良しのモモとカナと公園で遊んでいる。お姫様ごっこではいつも王子様のミツルだが、本当はお姫様になりたい気持ちを隠していた。そんな時、小さな可愛い靴を片方拾う。ずいぶん汚れているみたいだけど、一体この靴の持ち主は誰なんだろう…?