『鼓動』
ウダ・タマキ
(『姥捨て山』)
高齢化の進展が止まらぬ2120年、日本。ついに、一定条件を満たせば老人を姨捨山に棄てても良いとする棄(き)老法(ろうほう)が施行された。亜津沙は一人息子の優汰に背負われ、姥捨て山を登っていた。
『森の香りの人』
小山ラム子
(『檸檬』)
高校生のわたしは日課の散歩の途中で目の前に転がってきた小瓶を拾う。それは前を歩いていたおねえさんの持ち物で、どうやら中にはお酒が入っているらしい。
『幸せなオオカミ』
福間桃
(『赤ずきん』)
「オオカミらしくない」と言われ、周りから受け入れられないオオカミがいた。ある日、自分の理解者を求めて山の麓に降りるも、猟師に撃たれ負傷してしまう。森の中で気を失ったオオカミが目を覚ますと、そこは人間の家の中だった。
『箱』
平大典
(『浦島太郎』)
ヒラメである俺は不機嫌だった。海底にある竜宮城へ来た浦島太郎という地上人は、新参者のくせに乙姫様から寵愛を受けていたのだ。やっと浦島が地上へ帰ることになったが、気持ちは収まらない。俺は玉手箱という土産品に目を付けた……。
『夢十六夜』
夏藤涼太
(『夢十夜』『第一夜』)
東京で孤立していた奈美は幼い頃の夢を見て、十年ぶりに田舎に帰る。願いが叶うという海岸線を幼馴染の凪と歩く。だが奈美の願いはもう叶っていた。十年前に二人で海岸を歩いていた際、凪は津波に飲み込まれて死んだ。現実を受け入れられない奈美はずっと夢を見ていたのだ。凪は奈美の目を覚まさせる。
『知らすが仏』
山賀忠行
(『蜘蛛の糸』)
現世で悪事を働き地獄に落ちた健三は双子の兄史郎の画策で天から垂れる糸を用いて地獄から脱出し天に侵入することに何とか成功する。しかしそこに広がっていた光景は全く想像とは異なったものだった。そこで二人が知った驚愕の真実とは。
『恋のかたみ』
和織
(『春の夜』)
同棲相手の松村清が、ある日突然「自分は山田竜太郎というもう一人の人間でもある」と言い出し、直美はただただ動揺する。しかし通い始めた精神科医の輪賀卓亞は、彼を二人にしたのは直美だと言った。
『本懐』
紫冬未秋
(『雉も鳴かずば撃たれまい』)
毎日一個善い行いをすることに決めた。その内容は、人の助けになる些細なことから、大きな事まで何でもいい。そう決めて約一年、今日も人を助けた。手伝い、掃除、お遣い。その中で、善い人になるために見つけた答えとは、一体何か。
『土曜日の女神』
ふるやりん
(『金の斧、銀の斧』)
泉の女神(ツッチー)に美大生の少年は恋をした。人間に興味津々の女神に少年は絵を見せたり話を聞かせる。彼女に実物を見せたい少年の前に別の女神(カヨコ)が現れた。彼女が人間の世界と少年に惹かれていることを察したカヨコはある作戦を立てる。そして少年は人間のツッチーを連れ街に繰り出した。