『最後の真珠』
三星円
(『最後の真珠』)
あんたは人前で泣いちゃだめよってママからきつく言いつけられていて、それはばくの涙が宝石だからだ――。はじめての強い気持ちを味わって涙を流すと、涙が結晶化して真珠のようになる〈ぼく〉が最後の真珠を産み出した感情とは。
『桃太郎をやるにあたって』
真銅ひろし
(『桃太郎』)
「何故、うちの子供が桃太郎じゃないのでしょう?」ある日、幼稚園の出し物の『桃太郎』に関して保護者からクレームが入った。バカバカしいクレームだったが保護者の強引な要求で配役についての話し合いが開かれることになった。
『マッチ売りの幸せ』
真銅ひろし
(『マッチ売りの少女』)
貧しい家に育った中学二年生の話。パチンコばかりしている父親と良い成績をとろうと勉強する娘。そんな娘は自分の家の経済状況を考え、高校進学について担任の先生に相談する。世間がクリスマスではしゃいでいる中、娘は自分の境遇を嘆かずに淡々と前へと進んでいく。
『静かな詩のような魔法』
和織
(『灰色の姉と桃色の妹』『シンデレラ』)
妹の詩と共に、この姉妹の力は生まれた。不幸でも、そのおかげで自分たち姉妹の絆は普通より強いものになったと感じていた。だから、気づいてやれなかった。自分の灰色の肌で妹の桃色の肌に触れることが、唯一の喜びだった。
『おぶすびころりん』
室市雅則
(『おむすびころりん』)
自分を『ブス』と称する女。彼氏が欲しいが自信がない。同じくらいの容姿と認知している友人に転んだことがきっかけで彼氏ができたという。女もそれを真似て転ぶことにした。
『醜悪』
軽石敏弘
(『みにくいアヒルの子』)
謎の感染症のパンデミックが勃発し、その奇病に感染した人々は醜い化け物へと変貌していった。唯一、幼い頃から化け物の子として育った私の父だけは自分の姿を醜いとは思わなかった。しかし、そんな父の声は誰にも届かず、人々は失った自分たちの真実の姿を取り戻すべく、破滅への道を突き進んでいく。
『太郎の帰郷』
和田東雲
(『浦島太郎』)
太郎は小学五年生。夏休みになると離れて暮らす母の故郷に帰郷する習慣がある。物心ついた時には家に出ていた母に対して、太郎は心を許すことが出来ないでいる。海岸を散歩して時を潰す太郎だが、ある日巨大な亀を見つける。怒りに任せ亀をいじめていると、白髪の男が現れ自分は太郎の祖父だと名乗る。
『G線上あるいはどこかの場所で』
もりまりこ
(『浦島太郎』)
赤坂太郎は、アルハンブラ三宅君があっちの世界の人になってしまってから字を読むとめまいがとまらない。机の花瓶が違うものに見えてしまう。それが見えるのは僕だけかもしれないって思ってたら、デボラ山口さんも同じだった。ある日、東山先生が放課後の教室で朗読をしてあげるよと、提案してくれた。
『わらしべ高校生』
緑
(『わらしべ長者』)
学校になじめず友達のいない高校生の麦野は気になる女子栞がいた。だが内気な麦野は話しかけることもできずにいた。そんなある日、隣の席のイケメン・藤藁をパンツ一丁にしてしまう。物々交換は順調に進む。藤藁の家は実はわらしべ長者で……