『Gの恩返し』
まいずみスミノフ
(『鶴の恩返し』)
「わたしは――あの時のGです」ある朝おれが目を覚ますと枕元に美女が座っていた。彼女はいう。「恩返しに来ました」だがおれはGに恩を売った記憶はない。そもそもGといえば国民の敵であり、正直恩を返されても嬉しくない。せめて哺乳類なら良かったのに…。
『手の鳴る方へ』
焉堂句遠
(『桃太郎』)
世界はいつの間にか、複雑になってしまったのか。いや、元々複雑だったのだ、きっと。だが、人は複雑さに耐えられるほど、強い生き物ではない。意味と無意味の渦の中、自我すら、時に放り投げてしまう。そんな厄介なモノを、シンプルな世界の住人が触れてしまったら。可笑しくなるよね、そんなお話。
『犬の果て』
堀部未知
(『老いたるえびのうた』)
雪の降る国と降らない国の戦争が終わった。未知果は姉のように慕った薫さんの戦死が受け入れられない。彼女はひとり国境を越えて、薫さんの故郷へと向かった。たどり着いた漁港で未知果は一隻の朽ちた潜水艦を見つける。艦内に入ると、そこはかつて薫さんが経営していた古書店だった。
『河童の国』
佐々木卓也
(『河童』)
高校生のぼくは、夢の中で修学旅行に途中参加しようとする。だが、学校と無関係なホテルで監禁されてしまう。その一室で河童から英語文章の暗記を指示される。突然現れた魔女の教えでパリに逃げ、夢から覚める。その3日後に従兄が他界し、現実世界だと思っていた弔い場所の高松市で知ったのは・・・
『地球玉手箱現象』
馬場健児
(『浦島太郎』)
ある日突然、全世界が白煙に覆われた。一瞬で全世界の人々が老人になってしまった。その瞬間を海辺のラブホテルでむかえたバンドマンの竜斗と恋人の沙織は不運にも童貞と処女のまま、お爺さんとお婆さんになってしまった・・明日のライヴはどうする!戸惑う二人の愛の行方はどこだ!
『地獄リゾートへようこそ』
二村元
(『蜘蛛の糸』)
死んだ俺は天国へ行った。天国は想像とは違ってぎゅうぎゅう詰めの満員だった。ゆったり楽しく暮らせるという宣伝文句につられて、俺はリゾート地獄に引っ越した。そこは最初は快適な場所だったが、ある日を境に本当の地獄になり、俺はお釈迦様が垂らした蜘蛛の糸につかまって天国に戻ろうとした。
『うし若とベンケー』
島田悠子
(『牛若丸と弁慶の逸話』)
ある男子校。美形の転校生、うし若に人気NO.1の座を奪われたベンケーは、彼の護衛役に指名されてしまう。それは、彼女を作るとめんどくさいと言ううし若のため、他校の女子が彼に接触するのを阻止する役目だった。そして二月、バレンタインの決戦の火ぶたが落とされ、ベンケーは体をはることに……。
『クレイン』
影山毅
(『鶴の恩返し』)
高田はクレインというAIの開発をしているプログラマーだが、ある時クレインのデータが消去されることになった。それを避けるため、高田は会社に無断でクレインをネットにアップする。その後、感情を持つAIに進化したクレインは別のAIになりすまして、高田に恩返しをしようとするのだが・・・。
『憑きびと』
コジロム
(『死神』)
「ぼく」には霊が見える。殺された人にかぎってだが。同じ塾に通っていた山下さんが、塾の先生に殺された。「ぼく」は殺される直前の山下さんの霊を見ていたにもかかわらず、すでに殺されたものと思い込んでおり、助けることができなかった。激しい後悔にさいなまれた「ぼく」はある決意をする……。