『何の、糸』
三号ケイタ
(『蜘蛛の糸』)
男は高校で教師をしていた。怠惰に再試験を受ける生徒の中、一人の生徒が昔正直に点数を申告したことを思い出した。そして再試験の結果、その生徒を「救う」ことにする。それからも男は、今の自分の立場に疑問を抱きつつも、幾人もの生徒を救っていくのだった。
『沈黙の太陽』
三角重雄
(『名人伝』)
アシタ仙人の甥、シャーキャ国のナーラカは血気盛んなバラモンだった。ナーラカは功を焦り、誰彼かまわず法論をふっかけていたが、釈迦生誕の日を境に生き方を変えた。伯父の遺言に従って伯父の分まで修行し、未来に成道する釈迦と向かい合うべく、沈黙の行者となったのだ。
『桃燈籠』
青田克海
(『桃太郎』)
相次ぐ天災をきっかけに町に奉公に出た権蔵。町では毎年、その年生まれた子供の為の祭り「宝児祭」が行われていた。 だが、祭りが終わると一人の赤子が神隠しに遭ったのが判る。「毎年のこと。仕方がねえ」町の人はと笑って流すだけ。 本当に神隠しなのか?疑い始めた権蔵は衝撃の事実を知ってしまう……
『放課後ファイトクラブ』
平大典
(『力太郎』)
格闘技が流行っていた高校生の頃、学年の間で最強を決める殴り合いが放課後の体育館裏で行われていた。だが、ある日、最強の男であった太郎が倒されている姿が見つかって……。
『魔女がもたらすもの』
夜月朔夜
(『白雪姫』『シンデレラ』『かぐや姫』『ロミオとジュリエット』)
二人は幼い頃はずっと一緒だった。いや、どっちかっていうと、私がユキちゃんの後ろを離れなかったんだ。私はユキちゃんが世界で一番大好き。ママとパパ、まだ子犬だったタローよりも、ユキちゃんが好き。
『夢X夜(ゆめえきすや)』
柿ノ木コジロー
(『夢十夜』)
こんな夢を見た……で始まる、私のごく短いひとり語り。「どの仔でも良いですよ、可愛いでしょうと店主が頭上から声を掛けてきた。」私の見た、束の間の夢とは。
『夢千百十一夜』
わそら
(『夢十夜』)
こんな夢を見た。夢の中で俺はある爺さんと話をする。その爺さんは種を取り出して花を咲かせるといった。種が一瞬で花になるというのだ。俺はそれが見たくて爺さんをじっと見続けた。爺さんが川に入っていった。花はそれでも咲くものなのか…。
『冷めてゆく紅茶に涙をひとしずく』
いわもとゆうき
(『マッチ売りの少女』)
異様に白く光る雪が舞う夜。深い森の奥にある街の片隅で佇む少女。そこにひとりの紳士が足を止める。紳士は少女に言う。息子に見せてあげてほしいんだ、君が見たのと同じくらいに美しいものを、と。
『アババババ』
三角重雄
(『あばばばば』)
私は近所のコンビニに好みの美人を見つけて一目惚れをしてしまった。秋月さんというその子とどうしても仲良くなりたいと念じていた私は、ある時秋月さんに催眠術をかけて自分のコントロール下に置こうという野心を持ってしまう。ところが秋月さんは、その日以来、行方をくらましてしまった。