『ライオンは寝ている』
中村吉郎
(『ねずみの恩返し』)
ライオンが寝ていると、その体にネズミが駆け上がりました。ライオンはネズミを捕まえ、ネズミは命乞いをして逃がしてもらいます。後日、ライオンが罠にかかった時にネズミがあらわれ、網を噛み砕いてライオンを助けるのですが、ライオンは以前そのネズミを逃がしたことをすっかり忘れていたのでした。
『鬼婆の旅立ち』
室市雅則
(『安達ヶ原の鬼婆』)
安達ヶ原を命からがら逃げ出した鬼婆。ようやく安住の地を見つけたが、獲物の旅人は全く通らず、久しい時間が経った。ついに旅人がやって来たのだが、それはテレビのスタッフであった。そして、鬼婆の姿が全国で放送され…
『Steal this album』
澤ノブワレ
(『耳無し芳一』)
深刻な万引き被害に悩むレコード店。ようやく防犯カメラが捉えた万引き犯は、鎧武者の亡霊だった。店長の芳平はその亡霊と対峙するハメになるのだが……。一方海の底では、音楽を愛する少年とその祖母が、帰りの遅い鎧武者のことを心配していた。
『トゥルニエ女パピコ』
義若ユウスケ
(『竹取物語』)
粗忽で乱暴なひとりの若者が、美しい異星人と恋をします。〈ぼく〉は高校生で、火星人パピコは同じクラスの留学生。ある日、〈ぼく〉は火星人パピコにさそわれて花火大会にいき、いっしょにりんご飴をたべる……
『トゥルニエ女ハナ子』
義若ユウスケ
(『遠野物語』)
「お前の弱点はどこだ」ある日ぼくは白望山のふもとの道で、見知らぬ河童にそうきかれた。「腹」とぼくはこたえた。そしてぼくは家に帰ってゴンゲサマを釈迦と見まちがえ、カミサマになって座敷わらしのハナ子を背中に乗せ、夜の果てをめざして走りだす……
『夏目クリスティの嘘』
佐藤邦彦
(『あさましきもの』)
アイドル作家を募るコンテストに優れた小説を送った平田淳子と魅力的な写真を送った鶴田知美。編集者勝呂の勧めにより、二人で一人のアイドル作家、夏目クリスティとなるが、表舞台にでるのは知美だけで……。
『終活に忙しいのです』
サクラギコウ
(『死ぬなら、今』)
節約が生きがいだった男は家族にも節約教育を徹底させてきた。そんな男に死期が迫った時、男は自分のために何一つ贅沢なことはしてこなかったことに後悔する。死んだらせめて豪華な葬儀を出してほしいと考え終活に飛び回る。墓地を購入し、墓石を予約し、通知する人の名簿も作成した。
『桃』
月山
(『桃太郎』)
どんぶらこ、どんぶらこ、川を流れる桃がありました。桃は海に流れ、ぶくぶくと膨らみ、巨大になりました。島のようになった桃の上で、角の生えた者達が現れ――。――そうして。それは起きました。