『シベリア樹譚』
中杉誠志
(『耳なし芳一』『月夜のでんしんばしら』)
終戦後、シベリアで強制労働に従事させられる三輪芳一郎は、ある日の作業後、極寒の夜に針葉樹たちの行進を見る。はたして、これはうつつか幻か・・・
『ながやつこそ』
戸上右亮
(『粗忽長屋』)
写真付きで日記を共有できる人気スマホアプリ、「ピクトダイアリー」。セレブリティな日常を掲載して人気を博すユーザー「KOSO」だが、現実では恋人も友達もいない三十代。しかしある日、正体を知らないはずの同僚がKOSOのアカウントをフォローしてきたことをきっかけに、日常の歯車が狂い始める。
『バー「オスキナ」』
西橋京佑
(『シンデレラ』)
憧れと、現実の自分との間に横たわっている、諦めに似た感情。それを超えていくのに重要なのは、たいそれたことではなく、耳元で囁いてくれる誰かの存在だと「オスキナ」のママはいう。小さな、大きな一歩を踏み出す人のための、なんでもないお話。
『ゆみこと柱神さま』
はやくもよいち
(『天道さん金の鎖』)
田舎に来ていた七歳のゆみこは、ある夜、一人で留守番をすることになった。突然、「柱神の面」が動く。目を合わせた人間をとって食う化け物が家に侵入したのだ。化け物はゆみこを騙そうとするが、柱神さまのおかげで堪えきった。腹を立てた化け物は、「お前に呪いをかける」と言い出して……。
『鬼の目にも涙』
本多真
(『桃太郎』)
大鬼が川から流れてくる桃を持って帰ると、桃の中から人のあかんぼが出てくる。あかんぼに「桃太郎」と名付け育てることに。しかし桃太郎の事を思って、大鬼は人里に帰すことにした。数十年後、桃太郎が鬼退治にやって来たが、育てた桃太郎に手を上げる事が出来ず、大鬼はやられた振りをする。