『星めぐりの』
ノリ・ケンゾウ
(『銀河鉄道の夜』『双子の星』宮沢賢治)
「じゃあみんな、嘘ついたの」「ううん、嘘じゃない。でもいるの」「ねえさんむずかしいこと云う。そしたらお父さん、どこにいるの?」「電車に乗ったら、会える」「電車?ぼく電車すきだ」「なら行くよ、電車に乗って。お父さんに会いに」
『抜け小鈴』
清水その字
(古典落語『抜け雀』)
毎夜、美術室の絵から少女が抜け出し、校舎の中を歩いては絵に戻る。『俺』の描いた絵も同じように抜け出して、また絵の中に戻っていく。ある日、描いた雀を少女の絵と対面させてみると、彼女からある頼みごとをされ……。
『hallacination』
霧夜真魚
(『赤い靴』アンデルセン)
結婚八年目のぎくしゃくした夫婦。子供はいない。距離を縮めるために旅行へ出たが、そこで女性の死体を見つけてしまう。その女性の足はくるぶし辺りで切断され、赤い靴を履いていた。その赤い靴は執拗にどこまでも妻を追ってくるが……。
『YUKI-ONNA』
植木天洋
(『雪女』)
豪雪に見舞われる東京。残業で居残っていた主人公は無謀にも帰宅しようとする。そして視界が悪い中、奇妙な女と出会う。主人公は彼女の道案内にしたがって道を進んでいく。しかし一向に目的の場所に到着しない。主人公は母親の不吉な言葉を思い出す。彼女は、もしかして……。
『ヴロンド・ウィナース』
鈴石洋子
(『絵本百物語』より狐者異、「私の直江津」、「古老が語る直江津の昔」)
明治から昭和にかけ、日本の物流の拠点として栄えた港町を舞台に、内気な少女・内田さよの成長と、映画上映などの文化活動に燃える青年・賢二との交流を軸に、大戦前夜の悲劇を描く
『オフィスレィディ』
坂本悠花里
(『女生徒』)
カタカタカタ、タイプの鳴り響く部屋、いろんな臭いの充満する満員電車。そうして私はお母さんと猫のカノンの暮らす広い家へと帰っていく。女生徒でいることを諦めざるをえなかった、東京で働くオフィスレィディの独り言。自己愛に満ちた、いやらしくて可愛らしい、彼女の頭の中の言葉たち。