『忘れな草の物語』
新生実
(『忘れな草にまつわる伝説』)
翌朝には前日の記憶を全て失ってしまう少年タナ。少女ルリは、ある日彼に一冊のノートを手渡す。今日あった出来事を記して、明日も自分のことを思い出してもらえるように。魔法のノートだと興奮するタナだが・・・
『子供心』
伊藤円
(『浦島太郎』)
砂場でいじめられっ子の亀田を助けた太郎。お礼に家に招待されるが、そこは漬物のような匂いが漂う薄暗い町の小さな建物だった。騒がしい弟たち、時代遅れのゲーム機、異様に薄い麦茶。中流家庭の子 太郎の“異世界”体験記。
『檸檬を持って大海原へ』
薮竹小径
(『檸檬』梶井基次郎)
ゴールデンウィーク直前。大学の講義。教授の声はかすかにしか聞こえない。パチンコ玉を耳栓代わりに『檸檬』を読む友人。ふと目についた黒い大きな鞄。友人は確信に満ちた声で断言する。「爆弾に違いない。」
『ろうそく心中』
木江恭
(『赤い蝋燭と人魚』小川未明)
魚吉の葬式。長年の友 高五郎は遺言通り彼の手に赤いろうそくを握らせて海に沈め、故人が集めた無数のろうそくで送り火を焚いた。不意に高五郎が思い出したのは、魚吉が過去を語った夜のことだった。
『カウンツ』
こがめみく
(『番町皿屋敷』)
レコード店に夜な夜な響く喉をひねり潰したような叫び声。レコード番号を数える店長キクさんの慟哭らしい。彼に本当に足りないもの、欠けているものは何なのか。レコードから流れる音楽が空気を満たす。
『The perfect king』
田中りさこ
(『裸の王様』)
平和で穏やかな国を治める王様は、領民から愛される非常に優れた人物だった。ただ、たった一つだけ悩みが。それは、“誰も自分に意見しないこと”。王様は皆の心を確かめるため、ある作戦を実行することに…
『いそうろう』
冨田礼子
(『一寸法師』)
一人暮らしの“わたし”の家に突然現れた小さな男タロウ。“わたし”はその存在に驚きつつも共同生活に馴染み始めるが、その矢先、彼はどこかへ行ってしまった。帰ってこないタロウ。どこで、何を?
『カメはウサギを追いかける』
橋本成亮
(『ウサギとカメ』)
走るのが心底好きな柾は、公立高校の陸上部で日々練習に励む。柾が追いかけるのは、同級生で全国トップクラスの洋。才能の違いを痛感するも諦めない柾に洋が語った言葉とは。青春の友情物語。
『オオカミの白い手』
こゆうた
(『オオカミと七匹の子ヤギ』)
美和はある日、近所の洋館に咲き乱れる白いバラに惹かれ、中を覗き込む。すると、家主が現れた。ピエロの化け物みたいな化粧をしたおばあさん。断りきれず家に上がった翌日、美和の家を訪ねてきたのは…