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『見送る人』千田良輔

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 女性は振り返り、順一を見ると、少し考えてから「順一くん!?」と言った。楓だ。
 順一は思わず話かけてしまったが楓の口から自分の名前が出たことで安堵した。
「え、今、社会人?」スーツ姿の順一を見て楓は言った。
「ええ、まあ」
「へぇ、もうそんなかあ」
 楓はこうやって街中で教え子に会うことがたまにある。驚きつつも慣れていた。
「よかったら、どこか行きませんか?」と言ったのは順一の方だった。
 さすがにその言葉には楓も驚いた。少し迷ってから「終電までなら」と言った。

3
 駅を出て、近くの居酒屋に入った。
「飲み会の帰りで、ちょっと飲み足りないと思ってて。先生も飲み会?」
 そう聞かれて楓は答えに困った。
「まあそんなとこ」
 合コンに行っていたなんて恥ずかしくて言えず、かといって、飲み会とも嘘をつけなかった。しかし、その違いを気にするのは私だけかもしれないと後から楓は思った。
「もしかしてデート?」
 考えているうちに合コンに行っていたのを隠そうとした自分も、嘘をついて飲み会と言えない自分にも可笑しくなって、ふっと笑ってしまう。
「合コン行ってた」と言ってから驚く順一の顔を見て「普段は行かないよ。たまたま今日だけ」と付け加えた。本当に今日だけ。友達に誘われ、たまにはと思い行くと言ったら、誘ってきた友達にも驚かれたほどだ。
「でも結果はイマイチ?」と順一は言った。
「慣れないことはするもんじゃないね」
「先生らしい」
 そういって二人は笑った。
「なんか生徒とお酒飲むの悪い事してるみたい」
「俺も先生ってお酒なんか飲まないと思ってましたよ」
「飲むよ」
「でも俺のこと覚えてて嬉しいっす」
「覚えてるよ、順一君、変わらないもん」
 変わらないと言ったら順一の顔が曇った気がした。何も変わらないわけじゃない。成長している。成長しているからこそ変わらないところを見つけると懐かしくて嬉しくなるのだ。そう言ってあげるべきだった。
 それから順一の仕事の話や楓の学校の話をした。
「楓先生のこと好きって男子結構多かったですよ」
「え、そうなの?嬉しいなあ。みんな言ってくれればよかったのに」
「言ったらどうなるんですか?」
「ありがとね、って言うよ」
 照れて顔を背ける順一。
「……なんか先生も人間なんですね」
「え?」

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