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『他人のいる町』円堂久遠

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 なぜか慰められた。
 まぁ私も私だ。店から帰って寝て、起きて、アァァァと枕に叫んだ後、id検索をして、メッセージを送っている。
 スムーズな変態野郎、そう罵られてもしょうがないシチュエーション。親が泣く。
 未読のままのラインを見て、また一人叫ぶ。
 何してんだ俺は!プライバシーとか、そこらへん問題になってるだろ最近!
 ナンパしてるやつっていつもこんな気持ちになってるのか?もう人間の出来が違うや。そういや、この間恵比寿横丁に行った時も、結局、男友達と飲んで終了。淡い期待を抱いても行動には移せなかった。
 そこから進歩したのか、退化したのか。
 てか、あの女性と私の間におっさんが挟まっているのがもうややこしい。
 多分、あのおっさんたちのことだ。配慮とか、特にないだろう。
 その土日は何も手がつかなかった。下手したら10分に一回ラインを見ていた。初めてコンビニで缶ビールを買って、家で飲んでみた。苦かった。

「で、どうなんだい?かなちゃんとは?」
「いやぁ、いい感じかもしれないす」
 幸せな気持ちで私は答える。
 もうそろそろお巡りさんに逮捕されるかな、と毛布にくるまっていると、週明けに返事が来た。
「初めまして。何かあの店の悪ノリに巻き込んでしまいすいません……。けど、初めてあの店で会った時、違和感半端じゃなかったです笑」
 何回も読み返して、不思議な気持ちになる。そこから何回かラインして、「どうせ一回きりの人生だ!」とデートに誘うと、そんな覚悟なんていらなかったぐらいにすんなり、「いいですね!」と返事が来て、この間始めてのデートをした。
 大体、自分が肯定できないことを仕出かす時には、「人生は一回しかない」という事実に縋り付くしかない。それに縋って、人は仕事を辞めたり、ブログを始めたり、デートに誘ったりする。
 まぁ、実際デートといったって、5時ぐらいに蒲田で会って、散歩して、それぐらいだ。
 彼女は昔蒲田に住んでいたらしく、いろいろな場所を知っていた。
 ゴジラが出てきた川、めちゃくちゃ当たりが出るコインゲームの台、なぜか人相が見れるおばちゃんがいるたこ焼き屋。
 どうなの。こんなちょっとサブカルに足突っ込んだようなデートどうなの?もしかして、気があったりするの?全然、こちらとしては話聞くよ?
 未だに職業とか本名とかわからないけど、好きな本や映画は溢れるほど教えてくれた。ラインで送られてくるアマゾンのリンクの数々。最近はひたすら彼女の教えてくれた本や映画を見る土日になっている。
「また今度会おうってなっているんですよ」
 もう何回も来ているからか、勝手にテーブルにビールが置かれる。座る場所も、入り口に一番近い席から、奥の席に移っていた。
「よかったじゃねぇかにいちゃん」
 最初は妖怪に見えていたおっさん、おばちゃんたちも、最近はもう七福神に見えてくる。ひとまず拝んでおく。
「いやぁ、さらにやばいことがあって」
「やばいことだろ?言ってみな」
 ついこの間、2回目のデートに行った時だ。

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