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『他人のいる町』円堂久遠

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 別に二度と会うことはない。だから、ペラペラ話せることもある。東南アジアの屋台の時も「なんで俺ってモテないんだろう」と日焼けた顔のおっさんにベロベロになりながら相談していた。「フェイス!」と笑いながら教えられた。馬鹿野郎。
 聞いたか?という顔でおっさんが後ろを振り返る。
「かなちゃんは美人だからなぁ」
「この店の常連なんですか?」
「二ヶ月前ぐらいかなぁ。にいちゃんみたいにひょっこりこの店に顔を出して、それからちょいちょいくるようになってさ」
 住み着いた野良猫みたいな紹介をされている。 
 てか、かなちゃんって名前だったのか。
 おっさんがまた妖怪たちの元に戻る。
 店の奥からまたガヤガヤと話し声が聞こえる。時々弾けたような笑いが起こる。
 一通り話し終わったおっさんが、私の横にどしっと座った。
「にいちゃんさ、彼女とかいるの?」
 小指をあげる。
「いません」
 いないってよーと、奥に向かって叫ぶ。ウンウン、と妖怪が頷く。
「働いているのか?」
「あ、はい。一応サラリーマンを」
「稼ぎがあるってよー」
 また叫ぶ。おぉ、という顔になる。
「なぁ一個相談なんだけどさ」
 またずいっと近づいてくる。本能的に身を引く。
「かなちゃんとくっつけてやろうか」
「え?」
 思考より先に声が漏れた。
「いや、かなちゃんから男の話が全然出てこないんだよなぁ。おじさんたちちょっと心配で。にいちゃん多分かなちゃんと年近いし、働いているし、いっちょ人肌脱いでやろうと思って」
「はぁ」
 話が進みすぎてついていけない。働いている、のポイントが高いらしい。
「いいだろ?かなちゃん綺麗だしさ。にいちゃんも中々よ。俺には負けるけどな」
 と何も気にせずガハガハ笑っている。
「はぁ」
「よし、そうと決まったらあれだろ?ラインってやつ、が欲しいんだろ?孫が最近くれるんだよスタンプ」
 似つかない単語が出てくる。
「いやぁ、いいわねぇ。今は便利になって。昔は渋谷に恋文横丁ってやつがあって、手紙書くのも一苦労だったのに」
 いつのまにか隣におばちゃんが座ってタバコを吸っている。いよいよここは本当にお化け屋敷かもしれない。それか、超リアルなあの世か。
「じゃあ、にいちゃん、またこの店おいでよ。うまくそのラインってやつを聞き出しておくからさ」
「え?」
「任せろ任せろ。これでも昔は若い女にモテまくりだったのよ」
 自信満々な顔で肩を組まれる。私は世界にどこに行ってもおっさんに舐められる性分なのだろうか。
「まぁ大体、フラれて泣いてたけどな」
 他のおっさんが茶化す。ウルセェよ、と真面目に返す。

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