「おい、この寒さだと受付の人が大変だから、電気ストーブ置いといて」
「分かりました」
喪服を着た恰幅のいい男性と、細身過ぎている男性がテキパキと動いてくれている。
両極端な葬儀屋だなと思う。
「ご苦労様です」
恰幅のいい男性に挨拶をする。
「太田様。打ち合わせ通りに受付、駐車場の案内係を配置しました」
「ありがとうございます」
「通夜ぶるまい等も手配しておりますので」
「さすが手際がいいですね。高橋さんにご紹介いただいて本当に助かりました」
恰幅のいい男性は辺りを見回し、小声で話す。
「こういう言い方はおかしいですが、高橋様にはよくうちを使っていただいてまして。もう8回になりますよ」
弘江が死んだ……あの葬式の練習から少しして急に体調が悪くなり、そのまま入院。三ヶ月と宣告されたが、実は……
「昭雄さん」
小さく手をあげる高橋さん。
「どうも。わざわざありがとうございます」
「この度はご愁傷様でした……まさか弘江さんが」
「あんなに張り切って、喪主をやるぞって言ってたのにね」
高橋さんは少しうつむく。
弘江が一生懸命に書いていたメモを取り出し。
「でもあのお陰で、死亡届や火葬許可証の事とか、納棺までスムーズにいけました」
「少しでもお役に立ててよかったです」
「葬儀屋さんも助かりました。ただ、早い、安いは分かりますが、うまいというのがどういう事なのかが……」
「そのうち分かりますから」
力なく微笑む高橋さん。
「弔問客の受付を開始いたします」
細身過ぎる男性が伝えに来てくれた。
住職さんがお経を唱えている中、喪主の席に座り弔問客を出迎える。たくさんの弔問客。
弘江と同じ年位の女性がご焼香をあげにくる。
「この度はご愁傷様でした……」
「ご丁寧にありがとうございます。あの、妻の顔、見てあげてください」
この女性が棺桶にすがり付き号泣する。
「弘江ちゃん……なんで……なんで死んじゃったの……苦しい事とかなんにも言ってくれなくて……何とか言ってよ! ねえ弘江ちゃん! 」
わしはそっとこの女性の隣に行く。
「ありがとうございます。こんなにも弘江が思われて……うちの妻は幸せ者です。さあ、こちらで少し落ち着いてください」
女性を棺桶から離し、隣の部屋にお連れする。