二人とも、駅前のデパート屋上にある、キッチンカーでコロッケを売っている弘江と仲良くなったらしく、たまに弘江との会話に登場する子達だった。
弘江のことだ、どうせ一人でポツンとしているところを、グイグイ話しかけたに違いない。
弘江がみんなに紹介をし、綾乃ちゃんは元気に挨拶するが、隆司くんは人見知りなのか、小さい声でぼそぼそと挨拶をしていた。
「それじゃあいきますか」と高橋さんが本来の役目を思い出し、仕切り始める。
「綾乃ちゃんには、少し変わった弔問客をやってもらいましょうか」
「変わった弔問客……ですか? 」
そりゃ不安に思うだろう。いきなり意味不明の事を言われているのだから。
「そう。葬儀の最中にね、亡くなった人をさっき見たよとか、あそこに立ってるじゃんなどと他の方々を怖がらせるタイプでね」
「そんな弔問客いるの? 」
智美さんがみんなの気持ちを代弁してくれる。
「いますよ~!! 」
急に高橋さんのテンションが上がる。
「あれは忘れもしない1983年の冬の日。私の3回目の喪主の時です¦」
「あ、あの高橋さん、分かりましたから」
弘江が止めに入る。ナイス判断だ。
「そ、そうですか。ではこの話はまた後日ゆっくり」
「え、ああ、そうですね」とさすがの弘江も
面倒臭さを隠せない。
「あと隆司くんには、悲しさのあまり酔っぱらって来られた弔問客をお願いします」
隆司くんは戸惑いながら頷く。
「ではいきますよ。喪主がそこに座り、昭雄さんはここで死んでる」
嫌な掛け声だ。
「はい、不思議系弔問客が来る」
薄目を開けて見ていると、綾乃ちゃんは居間に入ってきてわしの顔をじっと見つめる。
「ねえ……なんでこの人はここで寝ているの? さっき玄関で立っているの見たよ」
こんな意味不明な事をちゃんとやる。いい子なんだな。
「さあ弘江さん、どういう風に対応しますか」
弘江は立ち上がり綾乃ちゃんの手を取る。
「ありがとうね……この人おっちょこちょいだから、亡くなった事気づかないで、みんなを出迎えているのね」
良子さん達が座っている所に連れて行く弘江。
「教えてくれてありがとうね」
「はいOK! 完璧」
指を鳴らし、やけに興奮している高橋さん。
「さあすぐに酔っぱらっている弔問客が来る」
隆司くんがおずおずと入って来る。小さい声でなにかぶつぶつと言っている。
「えっと、あの……ああ、酔っぱらったな」
可哀想に。あんなに大人しい子がこんな変な事をやらされて。
高橋さんは「もっと大きく。もっと酔っぱらって」と煽っている。
しかし、恥ずかしそうな隆司くんは全然変わらない。