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『街を見下ろす屋上で』柿沼雅美

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「ちょっとお姉ちゃんの旦那さんが実家に用があるらしくていないから、ひさしぶりに顔見にがてら土曜日だしで家事の助っ人に」
「へーお姉さん蒲田住みなんだぁ」
「うん、元々子供の頃住んでてさ、実家もまだ近くにあるしって結婚した時に蒲田にしたみたい。お姉ちゃんの家自体は新婚のときに1回行ったくらいですごい久しぶりなんだけど、せっかくだし。でも理香の話絶対駅着いたら思い出しそう」
「思い出してなんてヤツだって男のこと思って」
 理香がそう言って笑う。
「でもえらいねー英里、お姉さんとこ行って家事やって子供の面倒も見るんでしょ?」
「あ、そうだねぇ。さすがに姪っ子でも1対1じゃ辛いから、お姉ちゃんいる間だしまぁちょうどいいかなぁ」
「ってかさ、旦那さんがやればよくない? なんで休みの日にわざわざ英里が」
「休みでもないんだけどね、ははっ、まぁたまにはいいかなって」
「えらーい。じゃあ来月の会のときに話聞かせて」
「うんうん。じゃあ理香はまた婚活の話聞かせて」
 私が言うと、聞かせて聞かせてとみんなでおもしろがって言う。理香もおかしそうに、いっぱいネタ仕入れてくる、と顔をキリッとさせて笑った。

 西口商店街を歩きながら、なんだか変わったような変わっていないような不思議なところだなぁと思った。昔からあるような店もあるのに、全国チェーン店もある。とてつもなく安いものがあるわけではないけれど、仕事帰りにここを通ったら絶対に何か買ってしまう自信がある。
 派手な商店街とは少し違う、毎日、近所の人が行き交う、地に足のついた空気がある。ふと理香の話を思い出して、この辺じゃなさそうだなぁ、男の人も理香の好み考えたらここじゃなさそうだよなぁと思いながら歩く。
 子供の頃にこのあたりに住んでいたのもすっかり思い出せないくらい、大の大人になってしまった。
 商店街を抜けて、コンビニを曲がり、マンションの前に立つ。
 新築をローンで買えたとお姉ちゃんは喜んで、7年前に35歳で旦那さんが購入して、30年ローンと言っていたのを思い出すと、ローンを払い終えた頃には新築でもなんでもない、築30年以上の時代遅れの建物になるような気がしてならない。それでも、こんなにドーンと、まっすぐ佇んで、君には買えないでしょ?と見下ろしているように見える。
「わー英里、ひさしぶりー」
 オートロックのマイク越しに英美の声が響く。
 開いたドアを過ぎると、数年前に見たときと何ら変わらないマンションのロビーがあった。革張りなのか黒いソファはしわしわしていて、数年が経過したのがはっきり分かった。
「いらっしゃーい」

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