(何でも言って、いいのかな。・・・・・・・でも、わたしが言いたいことって・・・?)
ずっと「香澄の意見は聞いていない。お前はただ黙って頷けば良い」と教えられてきた。なので、自分が何をしたくて、何を言いたのか、あの頃の私にはすぐに答えが出なかった。
「さすがに食べ過ぎたわね」
結局、叔母さんは私が残したパフェを完食し、更に調子が出てきたと、その後パンケーキも追加したのだ。
「うう、苦しい」
「ごめんなさい、私が残したから」
「いやいや、明らかに違うでしょ。香澄ちゃんが謝る所じゃないよ、ここ。それに私、追加注文しているし」
叔母は何か考えているのか、ピタリと足を止め、一度天井を見上げた。それから、膨らんだお腹をさする手を止め、その手を私の頭に乗せてきた。
「香澄ちゃん、これから一緒に暮らしていくんだから。遠慮はなし、ごめんなさいも本当に悪い事をした時だけね」
「え・・・?」
「そりゃ、人間急には変われないけど。でもさ、一緒に住んでいるのにさ、遠慮なんてされたら寂しくて泣くよ?!あとさ、とりあえず謝るってのは、やめよう。ごめんなさいより、ありがとうの方が好きだし、私。謝る前に、まずはその出来事を反芻する。自分の立場からと、相手の立場からで。難しそうに思えるでしょ。でもこれ、訓練で誰でも出来る様になるんだよ。だって私が出来たんだもん。時間はかかっても良い。だから、考えて、それでも謝りたいと思ったら、その時出たごめんなさいは大きな意味を持つと思うの。大事なのは、自分がどう思うか、だよ。他人の言葉に振り回されちゃ駄目。勿論、今、私が話している内容も、ふーん、そうなんだくらいで流して欲しいの。私は香澄ちゃんの思想をコントロールする気はないから。いや、そんな事絶対したくない。今までは、きっと親が全てで、彼らが世界で、正義で、言い方は悪いけど香澄ちゃんという一人の人間を、親という立場で乗っ取っていたと思う。そうやって考えると、コンニャローあの二人、なんて酷い事をしてくれたんだーってなるでしょ。でもさ、そんな事、これからの人生で沢山あるのよ」
(コントロール?乗っ取っていた?・・・分からない。お母さんは、私をどうしたかったんだろう)
「ねぇねぇ、人間ってさ、ウイルスに似ていると思わない?突拍子もない例えだって言われるけど、これは私、世紀の大発見だと思っているのよ。私、天才」
「・・・は・・ぁ?」
うろんな反応は見えていないのだろうか。鼻高々に言葉を続ける。
「ウイルスってさ、人にくっ付き、相手を自分の遺伝子情報に書き換えていく。自分のコピーを作りたいのよね、本能として。そこの部分が、とても人間と似ていると思うのよ。親だけに限らず、友達同士でも。共感する事を求め、自分と違う意見は排除しようとする。でもさ、色んな人が居たって良いじゃんね、というか、色んな人しか居ないじゃん、この世の中。全く同じ人間、コピーロボットなんて会った事ないぞ」
「コピー・・・ロボット」