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『おばあちゃん、故郷に帰る』永佑輔

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 ナスもキュウリもないくせに老眼鏡が入っていた。メガネは冷やすと見えやすくなるという迷信を、翔子の両親は未だに信じているらしい。一体、どこのマヌケが広めた迷信なのだろう。
 恵奈は嬉しそうにキンキンに冷えた老眼鏡をかける。
「冷やしメガネは見えやすい。蒲田のコトワザ」
「ないよ、そんなコトワザ。買い物行って来るから待ってて」
 翔子は恵奈をあの世に戻すためにナスとキュウリを買いに出ようとする。
「火気厳禁だから送り火は焚けないの」
「だったらどうやってあの世に戻るつもり? ガスコンロじゃ煙はろくすっぽ出ないだろうし、花火の煙は猛スピードだから嫌なんでしょ?」
「池上本門寺にあるお墓に線香を上げたら戻れるかも知れない」
「ウチのお墓は池上本門寺じゃなくて、池上本門寺の子院の永寿院じゃん」
「構いやしないよ、三重県民だって大阪人って自称するんだから」
 翔子はあまりにも暑いので蒲田から池上くんだりまで行きたくない、と本音をポロリ。
 恵奈はマッテマシタと翔子の鼻先にプロレスというニンジンをぶら下げ、不敵に笑う。
「力道山のお墓があるよねえ? お盆の最中だから力道山の幽霊がスクワットでもしてたりして」
「力道山先生と言って」
 翔子は胸を張り、元彼に貰ったプロレスTシャツを見せつけ、元彼がコンビニで買ってくれたビーサンをつっかけ、意気揚々と玄関を開ける。
 恵奈がガタを指す。
「この子を撫でてから出てって。私の命と引き換えに誕生した子だから」
「え? ガタっておばあちゃんの生まれ変わりなの?」
「生まれ変わりゃしない。出て行く者がいれば入って来る者がいる。そうやって色々な物事が受け継がれる、そういうことだよ」
「出て行く者がいれば入って来る者がいる。ウンコと同じシステムだね」
「そんなことばかっし言ってるから男に愛想尽かされるんだよ」
「何で知ってんの!?」
 翔子は仏頂面でガタを撫で、マンションを出る。と、先のおじいさんが奥さんらしき人と前を歩いていた。

 蒲田駅から池上駅に電車で向かう翔子をよそに、幽霊の恵奈は瞬間的にサクッとワープ。
 池上本門寺の階段はスポーツマンがトレーニングに使うほどの段数と急勾配で目がくらんでしまう。おそらく力道山先生もここでトレーニングをしたことはないだろうし日蓮聖人も眉をひそめただろう、と翔子はブツクサ文句を言いながら上がる。
 恵奈は幽霊だからススイのスイと上がってゆく。というより飛んでゆく。

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