ただ気落ちしていた私を少し高揚させてくれた、そんな内装の雰囲気だった。
「何を食べようか」
彼がメニューを見ながら独り言の様に言っていた。
「ケーキでも頼もっか? せっかくの誕生日だし」と私は茶化すように返した。
「流石にそれはいいよ……まあ、甘い物は食べたいかもな」
「私は……コンビの奴にしよっかな、ハンバーグとチキンの。あと……グラタンもいいな」
「そんなに食えるのかよ?」
「なんかものスゴ、お腹が空いてきた」
気持ちを割り切ってしまうと、何か張っていた肩から力が抜けて、お腹の中の袋も一緒に緩んだ感じだ。今までで一番、物が食べれると錯覚するくらいに。
その私の様子に肩を竦め気味で彼は微笑んでいた。
呼び出しブザーで店員さんを呼ぶ。
店内を改めて見廻すと私達以外のお客さんは少なかった。夕飯時を過ぎた遅めの時間。広めの店内には五、六組位しかいないか。
そのせいか店員さんは直ぐに私達のテーブル前に現れてくれた。
注文をする。結局、私はグラタンも頼んでいた。彼も予想外に多めの品数。
注文を終えて待つ間、彼との会話も何時もと変わらない、たわいない内容だった。
互いの仕事に友人との会話。
近況報告。付き合って側に居る筈が、離ればなれなった親戚みたいな。
それでも環境の代わり栄えは、何時もよりは彼との会話を楽しまさせてくれていた。
目の前にテーブルに、鉄板の上で焼き音をジューッと立てるハンバーグ。美味しさと食欲を象徴する音なのに、ファミレスで聞くと何故か安心するのは私だけだろうか。
彼も大判のハンバーグのコンビメニュー。ああ、あっちも良かったかなと対峙する料理を見比べて、ついつい思ってしまう。
小さな鼻歌交じり、ナイフとフォークを子供のように掲げてハンバーグに通す。
もう何でここに来たかなんてどうでもいい――どうでも良くはないけど、もう深く考えるのを止めた。
充分に楽しいし、嬉しいし。充分、美味しい。
バクバクと料理を口に運んで行く私。食べる事に夢中になっていた。
「なあ、子供の頃の“ご馳走”って何だった?」
食べてる最中に、急に彼が質問を投げかけて来ていた。
「えっ? なに?」
「だから小さい頃のご馳走」
「大好きなものって事? 私、いっぱいあるよ」
「いや、そう言うんじゃなくてさ……」