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『ファミリーレストラン』洗い熊Q

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「……今日、あなたの誕生日だったね」
 思わず序で出てしまった言葉。本来なら一番、聞きづらい事だったはずなのに。
「ああ、そうだね」
 予想外に、彼の返答はあっさりしていた。
「ごめんね、毎年。その日に何もして上げなくて……」
 これも序で出た言葉。去年までは当日に謝るなんて出来てない。その日が過ぎるまで、わざと素知らぬふり。
「別に気にする事はないよ。大抵に仕事で遅いから」
「でもやっぱ、せめて一緒にご飯食べるくらいは……」
「食べに行っているじゃないか。翌週にはさ。君の誕生日に」

 これが一番の原因かも。
 六日違いの私の誕生日。いつも合同でって感じて終わらしてしまってる。
 付き合い始めは個別にしていたのに、多忙さでそうなってしまう。せめて君の誕生日だけでも。そんな彼からの表面に出さない気遣いだった。

「じゃあ、今日はあなたの誕生日会って感じだ」と私は殊更に声を弾ませて言っていた。
「まあ、そうだな。それもある」
 彼は満更でもないという感じで答えてくれていた。
 良かった。思い詰めている雰囲気じゃない。話しづらい事だと感じたのは思い過ごしか。
 運転する彼を笑みで見る私。それを横目でチラ見して、はにかんでいる彼。
 安堵の空気。一変した雰囲気に安心した私はまた、流れる景色を眺め始めていた。

 ……? ここはどの辺りなんだろう?
 話している間に、随分と車は走っていた。
 複数車線の国道からはいつの間にか外れていて、道幅がある片側一車線の道路になっていた。
 脇には飲食店やコンビニ店が並んでいたり、マンションなど住宅街が入り交じった光景。私達が住んでいる市内じゃなかった。
「ここ、どの辺りなの?」
 私も車の運転はする。
 でも市外や県外まで出てゆくほど遠出は余りしない。多少なりと何処を走っているかは見当は付くけど。
「もうすぐ着くよ」
「そう……」
 彼は答えてくれなかったが、別に直隠しにしている様子もない。着けば分かると暗に言っているつもりか。
 宣言した通り、車は速度を落とし始めていた。左折するウィンカーの音がカチカチと鳴る。車は駐車場へと入って行っていた。

 
 道路が凹んで緩やかな下り坂の終わり。丁度、窪地の様な場所だ。

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