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『きっずハンド』黒藪千代

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 このアプリはある程度の距離までなら対象者が何処にいるのかを把握出来ると言う。つまり俺が補助輪付きの自転車に並行して小走りについて行かなくてもベンチに座ったまま幸太郎がどこを走っているのかを把握出来る。その程度のアプリならネットで探せば何処かにありそうだとも思ったが、範囲を公園内と設定しておけば、その範囲から対象が出ようとすると腕時計型の器具が反応し物凄い音を出すらしい。これならば幸太郎が公園を出てしまう危険も回避出来るし、最悪誘拐などの事態にも機敏に反応出来ると山下はさらにドヤ顔を向ける。
「名づけて(きっずハンド)どうだ!いいネーミングだろっ!」
 二つ目の特大おにぎりを片手に持った山下は満面の笑みで言いながら顎を持ち上げた。
 誘拐が回避出来るとは安易に思えないが、足がもつれる程あの公園を走らなくて済むのなら試す価値はありそうだと思えた。
 公園に着くとさっそく自転車にまたがる幸太郎を呼び寄せ妻のように幸太郎の目線までしゃがみこんだ。昨日山下が説明してくれた事を思い出す。
(まず、3色のシールから一つを選んで対象者の手首付近に貼る。)
「幸太郎、どの色がいい?」
 俺はポケットに忍ばせていた3色のシールを手のひらに載せて幸太郎の目の前に差し出した。
「何これ?何かのゲーム?」
 何か楽しいゲームが始まると思い込んだ幸太郎。テンションを上げて喜んだ。
「幸太郎の好きな色のシールを腕時計に貼るんだ。そうすると、ほらっ!」
 山下が授けてくれた秘密兵器の腕時計型器具をジャジャーンとばかりに見せた。
「パパ!新しい腕時計買ったの?!凄いっ!かっこいいね!」
 秒針もなくスマホを小さくしたような画面が付いた器具を幸太郎は腕時計だと思い込む。
「このシールでパパの腕時計と幸太郎の腕時計が見えないラインで繋がるんだ!どうだっ、凄いだろ!」
「ラインって何?」
「う~んそうだな?パパと幸太郎を繋ぐ糸みたいなものだ」
「糸電話みたいな?」
「うん・・まぁそんなもんだな!これがあれば幸太郎が自転車で走り回ってもパパには幸太郎がどこを走っているかわかるんだ!」
「へぇ、凄いね!絆だね!」
 幼稚園児の幸太郎から(絆)なんて言葉が出て来て俺は少し驚いた。
「そうだ幸太郎!絆だよ。パパと幸太郎の絆」
「男同士の絆だね」
 嬉しそうに腕時計に黄色いシールを貼った幸太郎は勇んで自転車にまたがりペダルを踏み込んだ。小さな自転車はみるみるスピードを上げ遠ざかって行く。
 腕時計型の器具からアプリを起動して設定画面から対象までの距離を設定し開始ボタンを押した。器具を幸太郎が走り去った方向に向け画面を表示すると、小さな画面の中に黄色いラインがその方向に伸びて少しずつ左に傾いていく。幸太郎が最初のカーブを曲った所だ。目を凝らしてその方向を見ると緑の芝生の向こうに小さく幸太郎の姿が確認出来た。

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