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『きっずハンド』黒藪千代

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 いつもなんだかんだと出かける時間を遅らせようとする俺を想定していたのか、幸太郎は拍子抜けしたように表情を和らげた。
「幸太郎!自転車のカギは持ったか?」
「う、うん持ったよ!」
「じゃぁ、今日は腕時計も付けて行こうか!」
「えっ、だってママが公園で遊ぶ時は腕時計はダメって言ったよ」
「せっかくサンタさんに貰った腕時計なのに幸太郎は使いたくないのか?」
「使いたいけど・・・」
 ママとの約束を破っていいものかと逡巡する。素直ないい子に育ったなと我が息子ながらに誇らしく思う。しかし、今日はその約束を破ってもらわなければならないと心を鬼にする。
「ママには後でパパが謝るから、今日は腕時計を使おうよ」
「ほんとにパパが謝ってくれる?」
「謝るよ!幸太郎はちゃんとママとの約束を守ろうとしたって言うよ!」
「うんっ!じゃ付けて行く!」
 さっきまでの泣きべそが嘘のように晴れやかな笑顔を向ける幸太郎に俺は何故だか物凄く嬉しかった。
 今日の俺には秘密兵器がある。三ヶ月間土曜日の公園通いに辟易していた俺に同僚の山下がこっそり授けてくれた秘密兵器だ。

「岡部、コレ使ってみてよ」
 土曜日が明日に迫った金曜の昼休み、サンドイッチを齧りながらついたため息に反応するように隣のデスクで特大のおにぎりにかじりついていた山下が引き出しから小さなベルトの付いた器具を取り出して俺の机の上に置いた。
「何?また試作?」
 山下は試作と銘打ったちょっとしたアプリを作る事が趣味だ。この間もお掃除ロボットからヒントを得たと言って俺にドヤ顔をしたのが普通の掃除機をスマホから遠隔操作して家の中を掃除すると言ったアプリだった。山下曰く、座ったままでお掃除完了とドヤ顔をしていたが、自分で掃除機を操作した方が楽だとみんなに言われ数ヶ月を費やした趣味的アプリは御蔵入りとなった。
「明日、また公園だろ!使って感想を聞かせてくれよ」
(公園)その言葉にさっき吐き出したばかりのため息が胸の中に再びたまる。
 重たい気持ちを振り払うようにその器具に手を伸ばした。手に取ってみると腕時計型のスマホのようだ。
「これはもう他社がやってるやつだろ?」
 押し返そうとする俺に山下は小さくドヤ顔をしてアプリの説明を始めた。

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