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『ほうちゃん。』野坂佳妓

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「おぉ!たんまり貯めとったわ。俺にバイク買う金はくれへんかったくせに。」
「そうなんや…え?じゃあオトンそれに付いて行ったん?そんな関係じゃないのに?」
「…お前、おばちゃんとウチのオカン幼馴染って知ってた?」
「知らん…かったと思う。」
なんでアンタだけ知ってんや。
「やねんて。ほんでよ、年頃ン時に男取り合ったとかでな。」
「オトンちゃうよな。」
げんなりしながら牽制した。
「その方がおもろいかな?」
体を揺らして引き笑うたもっちゃんの肩をパシンとひっ叩いた。
「いや、ほんでな。そんな事はしょっちゅうらしくて、その度におばちゃんウチのオカンに負けとって。」
なんか惨めや…。きっと敵わへん思いながらも対抗意識だけ燃やしてたんやろうな。
おばちゃん綺麗やから。
「そやけど、せっかく付き合っても何でかおばちゃんに後から絶対取られとってんて。それが悔しくて悔しくてって今でも歯嚙みしよったで。」
自分の母親の事やのに、ようそこまで楽しそうに話できんなぁ…
さっきの私の話の時神妙な顔してたけどアレ嘘かもな、とか心の中で思った。
「当時はプライドもあって悔しくても去る者追わずって格好つけとったけど、ホンマは生きてる間に一回くらい人の男とってみたかって。」
「人の男っていうかオカンの男やろ?」
言うた後でおばちゃんディスってる感じになってない事を祈った。
これが友達やったら私は断然おばちゃん側につくから。
そんな女の機微を気にする風もなく、何が可笑しくて笑ってるのか、この子のツボは分からんけど、おばちゃん譲りの端正な顔でもあまり女の影がない理由は分かった気がする。
「まあでも、余命も少ないこんな歳で本気で実行でけへんし、そんな男もおらんし、雰囲気だけでもって。」
「そんな理由でオトンよう行ったな。」
マスターが珈琲のおかわりを淹れてくれる。
その顔を見て遺伝子の妙を思う。
その事に一抹の不安がよぎる。
「その…むか~しむかし、大昔に何かあった…とかは…。」
とまじまじとたもっちゃんの顔を見る。
私の視線に言わんとする事が分ったらしく、たおやかに椅子を私の方向に回転させ足を組みなおし
「それは、俺も、知らん。」
と悪戯に口の端を持ち上げた。
その様子が美しかったので、私との血の繋がりの可能性は皆無と悟る。
「お前がいてへん間、冷戦中やったんや。おっちゃんとおばちゃん。」
「なんで?」

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