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『ほうちゃん。』野坂佳妓

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ヤクルトファンのおっちゃんが千円広げて二カッと笑う。
「おおきに。毎度。」
こちらも倣って笑顔でお金を貰う。
私の笑顔は勘定の時だけやけど…。
「おかあちゃん帰ってこんかったな。」
不躾おっさんがボソッと言うて店の中を見渡した。
「遅いなぁ。おおきにー。」
とだけ言うて空いた皿を厨房に引き下げる。
ジョッキに焼酎を入れながらおっさんが店を出るのを窺う。
店先で煙草に火つけてキョロキョロしてる。
オカン探しとるわ。また店閉めるころに来るんやろな。ストーカーかっ‼
たもっちゃん呼んどこ…あのスナックの次男坊。
母親の非礼を詫びに来てからオカンの相談役となっている同級生。
詫びに来ること自体、私には謎やけど、お前は分からんでええよ。と窘められてなんか考えるの面倒臭くてふぅんとだけ言うといた。
何か知らんけど、それからよく来る。
スナックでもなんかあったんかして、たもっちゃんおったら店入ってきよらへん。
面倒臭いなぁ…。思いながら何気に注いだジョッキを持っておっちゃんの席に戻る。

「結婚するって誰に聞いたん?」
おっちゃんの前に焼酎のジョッキとホッピーの瓶を置いてやる。
「ええんか?ほうちゃんの驕りか?」
「それはない。」
自分のための缶ビールも持って来てお構いなしに音を立ててプルタブを開けた。
「会うてないんやったら結婚なんか知らんかったんやろ?誰に聞いたん。」
嬉しそうにホッピー注いでたおっちゃんの手が一瞬止まって荒々しく注ぎ直した。
「ワシに来んな、て。」
今の今ホッピーで喜んでたのに今度はジョッキの中を恨めしそうに睨んだ。
「来るな?」
「そや!ワシ、結婚するのも知らんかったのにやで?なんやそれ!」
挟んだままのスルメに気付き、それを握りしめて飲むのに精を出す。
「嫁はんなぁ、出ていってから新しい男できとんや。なんや、小難しそうなややこしい奴や。」
おっちゃんの方が遥かにややこしい思うけどな。嫉妬かな。
ほんで、そのややこしいおっさんに本当に良くしてもらいすくすく育った娘ちゃんが言うには、連れ子なんか面倒臭いやろうにちゃんと向き合ってくれたし、オトンの事もオカンがなんぼ悪く言っても逆にオトンを庇うくらいでこんな男の人がおるんや。
って父親像が変わった、って。

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