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『ほうちゃん。』野坂佳妓

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「もう、お父ちゃん1年ぐらい経つか?」
いつもレモンサワーの色付き眼鏡のおっちゃんが片側の口の端を微かに上げる。
隣りの阪神のキャップ被ったヤクルトファンのおっちゃんが嬉しそうに皿を受け取る。
そのおっちゃんにだけごめん、お待たせって声をかけて店の外に出る。
あのおっさん嫌いやわ~。
親の駆け落ちなんかで心痛める歳でもないけどやな、不躾やねん。
胸くその悪さを店先で人の往来を見て和らげていると見知ったおばちゃんの顔を見つけて手だけ振る。
おばちゃんはなんでか握りしめたネギと一緒に手を振り絵ェ描いとんかぁー⁉て余計なことまで言う。
どこ行っても触れて欲しない事ばっかり言われるわ…。

うんざりしながら店に戻るとおっちゃんがまたホッピーを1本出してるところやった。
「おっちゃん!!!」
て咎めたら鉛筆探しながらちゃうねん、ちゃうねーんいうて慌ててる。
ちょっと可笑しかった。
「何本目なん?おばちゃんに怒られんやろ?もうやめときや。」
「それでも飲みたいんや。今日は飲ましてぇや、ほうちゃん。」
「何でそんな飲みたいの?しかもホッピーばっかりで酔わへんやん。」
取り上げたもののおっちゃんが可笑しくて1本くらいはいいかな?と一瞬だけ思った。
おっちゃんは諦めたのか萎んで席に戻り口さみしさを紛らわすようにスルメを歯のあった場所に挟んだ。
「娘がな、嫁行くんや。」
ポツリと話し出す。
「おめでたい事やんか。なんでそんな酔いたいのよ。」
あてもある程度出したし、買い出し行ってるオカンもそろそろ帰ってくるし。
なんでか興味がわいておっちゃんの横に座った。
「前の嫁はんとの子やねんけどな。」
「会うとったん?」
前のめりに話し出すおっちゃんとの間を体勢直す振りしてちょっと開けた。
「いやぁ…。最近はなぁ。そら、チビこい時は隠れて様子見てたで。前の嫁はんに見つかってからはなかなかなぁ。」
挟んだスルメを一度取り残り少なくなった薄いホッピーを飲み干してまたスルメを挟んだ。
「娘ちゃん知ってるん?覗かれてたこと?」
「ほうちゃん!覗くてまた言葉悪いなぁ!」
意外にもまともな顔して咎めるから、ほんまに娘はおるんやなって思った。
毎度の事やけど、ここらに来るおっちゃんらの話はまともに聞いてない。
それが礼儀って事もおいおい分かってきたから。
「ほうちゃん、ごっつおさん。」

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