「しかし、このジョッキは変わっておるな」
「と申しますと?」
「ジョッキのくせに馬に乗っとらん」
「……」
「ん?どうした。ワシがたった今発明したギャグだが意味が分からぬか?ジョッキとジョッキーを掛けたのじゃが、ちょいと高度すぎたかのぉ~」
「博士。くだらない冗談はやめて下さい」
「むっ!ワシの発明にケチをつけるか」
「何が発明ですか!そんな冗談を言ってはせっかく遠方より来ていただいたジョッキに失礼です」
「何?ジョッキが遠方より来たと?」
「ええ。ジョッキだけに紀州から」
「むむっ!ジョッキーを騎手と日本語にし、更に紀州と掛けおったな。ひねりのきいた見事な発明じゃ」
「恐縮です。しかし、これは博士の発明が先にあったからこそです。さっ、引き延ばしはこれくらいにして、味を確かめましょう」
説明しなければ分からないという致命的な欠陥がある冗談を終わらせ、いよいよホッピーを飲もうかという博士と助手。
「うむ。では、飲んでみるとするか。まっ、どうせ不味いに決まっておるがな」
「だといのですが……」
どぼどほどぼとホッピーをジョッキに注ぐ博士と助手。
「おー。生意気に泡立っておるな。では、このホッピーなるものの不味さに乾杯しようではないか」
博士が言い、カチンとジョッキをぶつけ、二人が同時に口へと運ぶ。
「なんと!切歯扼腕。味も上であったか……」
と博士。
「……。やはり……」
と助手。
「助手よ……」
「博士……」
二人が顔を見合わせていると、
「へい、お待ちぃ」
焼き鳥の盛り合わせが二人の前に置かれた。
助手がすぐにねぎまを一本手に取り、一口食べてからジョッキを口に運ぶ。
「博士」
「何じゃ?」
「私、発明してしまいました。このねぎまを食べてからホッピーを飲むと、ホッピーが更に美味しくなる上にねぎまも美味しくなります」
とまたジョッキを口に運ぶ。
「何じゃと!」
言うと、博士がぼんじりの串を手に取り、ガブリと噛みついたかと思うと、ジョッキを口に運び、
「助手よ」
「何でしょう?」