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『発明酒場』佐藤邦彦

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 「博士、ついに完成しましたね」
 助手が言う。ここはMad博士の研究所。
 「うむ。ようやく苦労が実った。随分と長い時間がかかってしまった」
 と博士。
 「そうですね。この発明に取り組み始めた頃は博士もメタボや健忘症に悩んでおらず、私も実に眉目秀麗、ギリシャ神話にでてくるアドニスの如き美少年でした」
 「……。バーネットよ……」
 博士が助手の名前を口にする。
 「なんでしょう?」
 助手が惚けた表情を博士に向ける。
 「……。まあいい。今日はめでたい日だ。失礼且つ事実を歪曲した発言も許すとしよう」
 博士が言葉を続ける。
 「兎にも角にも、実に感慨深い。ワシの数々の素晴らしい発明の中でも最上級のものとなるであろう」
 「素晴らしい数々の発明と言いますと……」
 博士の言葉を聞き、助手が訝し気な顔をする。
 「何じゃ、その顔は。これまでの素晴らしい発明をよもや忘れたわけではあるまい」
 Mad博士が少々苛ついた声を出す。
 「いえ、数々の発明は分かるのですが、素晴らしいというのが今一つ……」
 「なに?分からぬというのか!」
 「私の知る限りこれまでの発明ですと、猫用猫背矯正器に、一つ目小僧用の眼鏡やキリスト教徒用の仏壇などがありますが、確かこれらは近所の小学生に夏休みの工作用として販売し、すべてクレームとともに返品されてきたはずですが」
 「何を言っておる。もっとハイテクな発明もあるじゃろうが」
 「ハイテク……。また古色蒼然とした言葉ですね。ハイテクと言いますと……。あっ、鳩用の豆鉄砲ですね!」
 「違う!ほれ、あれじゃ、物質を……」
「あっ、そうでした。物質転送装置がありました」
 「うむ。あれは偉大な発明であった。なにしろA地点で原子にまで電子分解した物質を転送先のB地点で復元するのであるからな」
 「しかし博士。メロンを30センチ移動させるのに5日も掛かっておりますし、それに糖度もかなり落ちていたようですが」
 「うむ。100円玉を転送した時は何故か10円玉に変化したしの。その辺が今後の課題じゃな。しかしほれ、あの発明もあったであろうが未来予測をするマシンが」
 「あれのおかげで私は競馬と株で大損しました」
 「惚れ薬もあったであろうが」

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