「おかげ様で今でも独身です」
「うーむ。ではあれはどうじゃ、動物と話せるようになるゴエモンの鼻輪は」
「話せたのは河童だけでした。しかもその河童は着ぐるみです。河童から受取ったティッシュは博士に渡したはずですが」
「うむ。あの新装開店のパチンコ屋はさっぱりじゃった。では、あの飲めば時を飛び越えて未来に行ける薬はどうじゃ」
「あれは単なる睡眠薬です」
「どうもお前は批判がましくていかん。もっと素直にワシを盲目的に崇拝せねばならぬぞ。まあ良い。いかに批判精神の塊であるお前とて、今回の発明は批判できまい」
Mad博士が得意気に言う。
「実は博士。今回の発明なのですが……」
「何じゃ、また批判か」
「いえ。批判ではないのですが……。実は先を越されているようでして……」
助手のバーネットが言いにくそうに話す。
「なんと!吃驚仰天。この画期的なビールティストである焼酎の割り材が既に発明されていると!」
Mad博士が叫ぶ。
「えぇ。それもかなり前に。70年も前だそうです」
「なんと!驚天動地。70年も前とな。しかしワシの発明品の如くカロリーを抑えてはおるまい。なんといってもワシの発明品は100mlあたり25キロカロリーと驚くほどの低カロリーじゃからな」
「それが、非常に申し上げにくいのですが、先方は11キロカロリーだそうです」
「なんと!前代未聞。ではプリン体はどうじゃ。今回の発明では痛風持ちのワシでも安心して飲める様に大分抑えたからのう」
「それが、プリン体はゼロだそうです」
「なんと!呆然自失。0とな。ふざけおって。ならばタンパク質はどうじゃ」
「それも0だそうで。ついでに申し上げますと、脂質も0だそうです」
「なんと!朝令暮改。しかし問題は味である。味はどうなのだ」
博士が真っ赤な顔で助手を問い詰める。
「それについてですが、何でも近くの焼き鳥屋で飲めるということですので、良ければ確認に参りませんか」
「なんと!三寒四温。近所の焼き鳥屋で飲めると。何たる迂闊。まったく気づかなかったわい」
「博士……」
「なんじゃ?」
「四字熟語の使い方が先程から間違っておりますが……」
「なんと!顔厚忸怩。とにもかくにもレッツラゴーじゃ」
こうして死語と共に研究室を後にし、焼き鳥屋へと博士と助手は向かった。
「へい、らっしゃい!」
鳥五郎と紺地に黒で屋号が染められた暖簾を潜ると、威勢のいい声に出迎えられた二人はカウンターに座り、注文は焼き鳥の盛り合わせと、勿論ホッピー。
「うむ。このジョッキに氷とともに入っているのが焼酎で、この茶色い小瓶がホッピーなるものじゃな」
博士がしげしげと小瓶を眺める。
「そのようです」