週明け彼女は、楽しみしている遠足を控えている。小さめのウインナーを入れてほしいと要望があったので、一緒に探しに来たのだ。
お目当ての商品をカゴに入れると、レジまでの道のりを二人でのんびりと歩いた。
突然、娘は何かに引き寄せられるように脇道にそれた。そして、手招きをしながら言った。
「…ホッピー!ホッピーあったよ、黒いのもあるよ。」
私は昨日、この場所に居たので知っている。
「ほんとだねぇ。」
私がポツリと言うと、娘は「こっちも飲んでみたら?」と黒ホッピーを指さした。
ホッピーとは、昔よくお父さんが飲んでいたとか、会社の上司や、年配の人とか、そういう人に進められるものだと聞いたが、私にホッピーを勧めてきたのは五歳児だった。
「そうだねぇ、じゃあ買ってみようかな。」
私は言われるがままにホッピーをカゴの中に入れた。黒ホッピーも気になっていたので、いつか飲んでみようと思っていたが、翌日買うことになるとは思わなかった。
しかし、昨日よりもごく自然に手に取っている自分に気づく。背伸びをせず、等身大の自分でホッピーと向き合う。それは私が未知であった<ホッピー>を知ったからだと思う。
自分の意見を採用された娘は、ウインナーを選んだ時より嬉しそうだった。
家に帰ると娘は、窓際にある空のホッピー瓶を遠足に持っていってもいいかと尋ねた。
遠足で彼女は一体何をするつもりなんだ。「どうして?」と聞くと、「これもリュックに入りそうだから。」と真剣な眼差しで答えた。入るか入らないかの問題ではない。それはちょっとやめておこうとかと話したが、「えー。」っと渋る様子が伺える。最終的には、それは<持ち物>に書いていないという理由が、一番納得した。
そうこうしていると、せっかくホッピーを飲んだというのに、私の「Hoopy Hoopy AWARD 」は全く進んでいないことに気づいた。
設定は?登場人物は?色々とイメージを膨らませ、舞台は六本木にすることにした。きっと登場人物はホッピーに助けられ、ホッピーによって未来が変わるのかもしれない。
「Hoopy Hoopy AWARD 」に参加している人達もホッピー飲んだかなと考えながら、窓際に置かれた瓶を、またぼんやりと眺めた。
リビングでは、相変わらずティーカップに入ったホッピーを、人形達に振る舞う娘の姿があった。しかも、「今日は寒いので、温めてみました。」と言う設定らしい。
きっと彼女が大人になった時、必ずホッピーを手に取ると思う。