だから、ホッピーを飲むたびに家と故郷を思い出す。
そうこうしているうちにホピトラがやって来て、店の前に止まった。
それにしても派手な車で、これが北京の道路を突っ走っていたら爽快だなと思う。
運転席から馴染みのドライバーであるツアミが降りて来た。
「よぉ。ピワ君。元気かい?」
「はい。おかげさまで」
「本当、日本語上手くなったよな」
「ありがとうございます」
ツアミが荷台に昇り、ホッピーの黄色いケースを掴んだ。日に焼けた太い腕に筋が浮かんだのが分かった。
それを見るたび、父が自転車を直してくれたことを思い出す。
自転車を逆さにするためにハンドルを握って力を入れた腕にも筋が浮かんでいた。
父は色白でどちらかと言うと細身だが、やはり大人の男の腕だった。
「ツアミさん、力持ちです」
「これが仕事だからよ。慣れたよ」
「凄いです」
ツアミからケースを受け取るピワ。
その腕にも筋が浮かんだ。
自分もそんな年齢に近付いて来ている。
「ピワ君も力持ちだ」
「頑張ります」
よろけながらも、ケースを店の中に運んで行った。
いくつかを無事に運び、納品書にサインをする。
「仕事の後の一杯が楽しみだな」
ツアミが眩しい笑顔で言った。
「はい。ツアミさんはホッピー飲みますか?」
「大好きだよ。ピワ君も飲むのかい?」
「はい。大好きです」
「ホッピーに国は関係ねえみたいだな」
「はい」
二人は笑いあった。
ツアミは再びホピトラに乗って次の配送先に向かって行った。
「毎度! 行ってらっしゃい」
ピワはそのトラックに向けて声を上げた。
店に戻って、ホッピーケースをいつもの位置に置いた。
綺麗に並んでいるホッピー。
買われれる出番を待っている。
誰の手元に届くのだろう。
一本は、自分が買って、今日飲むことを決めると、瓶がやけに綺麗に見えた。
イセヤは、手を合わせた。
週の始まり月曜日が無事に終わった。