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『契約切れから始まる。』サクラギコウ

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 何かあったの?と訊いても「さて遅くなったが、夕飯にしようかね」と台所へ向かった。
 「今日は、美海が作ろうか?」
 気を利かして言ったのだが「おまえさんの作ったものなんか、食べられるかい」と憎まれ口をきいた。

 「お祖母ちゃん、また明日来るね」
 今日はリュックがずっしりと重い。中にはホッピーが入っている。どうしても持っていけとトミがリュックに詰め込んだ。
あと一日だ。明日くれば契約は終わる。時給が良くて夕食も食べさせてもらえると喜んで飛びついたバイトだが、毎日アパートに帰るとどっと疲れを感じる。

 慎吾と毎晩11時にスカイプで話をすることになっている。でも最近、通話ができないことがある。
 3歳年下の慎吾はまだ学生だ。次の3月には卒業の予定だが、卒業できそうもないという。好きなことにのめり込んで単位をなかなか取得できないのだ。
 今も小笠原の民宿でバイト中だ。スキューバーダイビングのインストラクターをしている。海に潜っている時が一番幸せを感じるという慎吾に、辞めろとは言えなかった。
 今夜も深夜2時まで待ったが慎吾と会話ができなかった。電話をしても電源が入っていない。なんとなく嫌な予感がしていた。小笠原へ行くといったときからそれは感じていた。

 いよいよトミの孫として最後の日だった。6:00ジャストに社を飛び出した。
 今日も遅刻は避けられそうだった。もより駅から相馬家までの道は走れば3分で着く。住宅街の中にあり周辺は敷地の広い家が多かった。
 道で主婦が立ち話をしている。奥様族は吞気で楽だ。前を通り過ぎようとしたとき「相馬さん」という言葉が耳に飛び込んだ。お祖母ちゃんのことを噂話しているのだと思った。「お気の毒にね」と「明日?」いう声も耳が拾った。
 玄関のチャイムを押す。最後のチャイムだ。よく頑張りました私。玄関ドアを開け中に入っていく。トミ祖母ちゃんがいつものように笑顔で出てくる。
「おかえり」
 最後の晩餐はカレーだった。
「祖母ちゃんはしゃれたもの作れないから、ごめんよ」
 今日はいつになく殊勝だ。ついほろっとなる。うんん、おいしいよと答えたが、正直味が薄くあまり美味しくなかった。
 最後の日はトミ祖母ちゃんが渋抜きした柿とホッピーをリュックに入るだけ持たせてくれた。

 夜、慎吾からの連絡を待った。ラインや電話、通信機器はすべて繋がらなかった。このままずるずると終わるのは辛い。休みをもらって小笠原へ行ってみようと思った。
 夜遅く慎吾からラインが届く。

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