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『海を見つめる、酔った猫』森な子

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「えー。四人で行こうよ」
「駄目でーす。デートの邪魔しないでくださーい」
 みゃーこさんがそう冗談のように言うと、二人はしょうがないなあ、という顔をして笑った。私は困惑していた。そもそもみゃーこさんとお出かけの約束なんてしていないし、それになにより、いつものように掴みどころなく笑うみゃーこさんの、本当の顔を見てしまったような気がして、罪悪感のようなものを感じた。
 二人は、じゃあ今度は四人で飲もうね、と、気分を害した風でもなく優しく言って去っていった。私たちはしばらくの間無言だった。
「みゃーこさん、どうしたんですか?」
 遠くに見える灯台の明かりを眺めながら、私はなるべく優しい声色を心がけて、そっと声をかけた。磯の香。頬を撫でる潮風と、どこからか聞こえる船の音。みゃーこさんはゆっくりと顔を上げて私の目をみた。
「……行こう」
「え?」
「飲みに行こう!」
 奢るから!と付け加えて、みゃーこさんはずんずん歩き出した
 たどり着いた田舎の飲み屋街。お店がちらほらと並んでいる。暖簾から漏れる店の灯りがあたたかい。みゃーこさんはずんずん進んで、一軒の店に私を連れて入った。
 そこは隠れ家のような小さな居酒屋だった。この街にこんなところがあったのか……と唖然としていると、みゃーこさんは慣れた様子で店に足を踏み入れ、渋い髭を生やしたおじさんに「今日は友達をつれているの」と軽く言った。
「そう、珍しいね」
「うん、珍しいでしょう。奥のテーブル席使ってもいい?」
「いいよ、ゆっくりしていきな」
「どうもありがとう」
 私はおじさんに軽く会釈をしてから、みゃーこさんと一緒にテーブル席についた。店のなかは真昼のように明るい。
「何飲む?わんちゃん、お酒強い?」
「まあ、そこそこですかね……みゃーこさんは強いんですか?」
「いや、弱い」
 そう言って笑うみゃーこさんはいつも通りに見えたのでほっとした。さっきのはなんだったんだろう。そう思っていると、みゃーこさんは「おじさーん、ホッピーください」と大きな声で言った。
「わんちゃんは?どうする?」
「え……どうしよう。じゃあ、同じので」
「ふふ。オッケー」
 しばらくすると枝豆とから揚げと一緒に、お酒が運ばれてきた。グラスに焼酎が入っていて、さらに瓶が運ばれてきたので戸惑った。
「焼酎と割って飲むんだよ」
 みゃーこさんはなぜかにこにこ嬉しそうに笑っていた。初めてのホッピーに、私があたふたとしている間に、すでにお酒に手をつけてごくごくおいしそうに飲んでいる。水みたいに。
 陽気なフォントでホッピー、と書かれたその瓶は、なんだかみゃーこさんによく似合う気がした。なんて思いながら一口飲む。はじめて飲んだそのお酒は、口のなかでぱちぱち弾けておいしかった。
「みゃーこさん、さっきどうしたんですか?」

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