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『ホッピー物語』星出知美

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そして半年くらいたった時だ。僕の両親が東京にくる用事があったので、彼女に会わせることにした。両親が飛行機で帰るのを見送るていで羽田でご飯でも食べないかと提案した。
すると彼女は自分もつきあって欲しい場所があると言い出した。僕の両親に会わせる一週間前に彼女の行きたい場所に行くことにした。

郊外の駅で待ち合わせた彼女は黒いワンピースだった。そして手にはホッピーの6本入りの箱を持っていた。
「今日は両親のお墓参りにつきあってくれてありがとう。」
彼女はいつもより落ち着いた声でお礼を言った。お彼岸だったので、お寺の墓地にはそれなりに人がいた。
「父がホッピー好きだったのよ。」
そういってお墓の前にホッピーを置いて、手を合わせた。
「お酒弱いのに濃くして飲むの。だから早死にしたのよね。」
と彼女は吐き捨てるように言った。思わず
「ホッピーの飲みすぎで死んだの?」
と聞いてしまった。彼女は大笑いして
「そんな訳ないよ。だって交通事故で死んだんだもん。」
と言い返してきた。
「いや、今の文脈だとお父さんはてっきりホッピー飲みすぎて病気かなにかで亡くなったと思うでしょう。」
と僕も言い返さずにいられなかった。本当は彼女を慰める言葉を探していたけれど、見つけられなかった。何か、何でもいいからくだらないことでいいから喋らないといけないと思った。
「ホッピー6本は多いんじゃない?」
彼女は呆れた顔をして
「今、どのホッピー飲みたいかわからないじゃない。いろいろ持って来ないと。」
と真顔で答えた。僕は返事のしようがなくて彼女を見つめ、吹きだした。
「人の顔見て笑うなんて失礼な人。」
と言いながら、手際よく線香をあげていた。

彼女の両親に会う事は出来ないし、結婚の申し込みも出来なかった。彼女は両親のいない生活をどう過ごしていたのかは分からない。勝手に可哀想と思ってはいけないけれど、彼女を僕が守りたいと思った。

次の週に僕の両親と会った。羽田の居酒屋で僕はホッピーを頼んだ。普段はお酒を飲まない両親にも一口づつ飲ませ、ネットで動画を見せて、ホッピーを説明した。
「父もホッピーが好きだったんです。」
と彼女は両親に説明した。「彼氏の両親に会う」という緊張すると思われるイベントもホッピーのおかげで和やかに済んだのだ。

先月、僕は彼女とスペインでバル巡りをしていた。
バルセロナで地図を広げながらお目当てのバルを探し、飲み歩いた。気が付くと、もう3軒目になっていた。9月だったので日が長く、3軒目でもまだ外は明るい。

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