ホッピーがこぼれそうになるくらい強くジョッキを合わせた。
ぐいぐいっと飲む。うまい!
桂樹くんが作ったキュウリの糠漬けを、口に入れる。
「うまい! なかなかいけるよ」
あっさりとした塩味が絶妙で、歯ごたえ満点。ホッピーに合う。うまい、としか言葉が出てこない。なんだか、幸せな気分になった。
「ありがとうございます」
キュウリの糠漬けを肴に、ホッピーが進んだ。
桂樹くんは、杉本さんに似て、知識があるし話題も豊富だ。話を長い時間聞いていても、あきることがない。
腕時計を見ると、いつの間にか針は深夜の1時を指していた。
気が付けば、冷蔵庫のホッピーをふたりで8本全部空けていた。
俺は酒が強いほうだけど、桂樹くんも負けていない。まだ若干20歳なのに、なかなかのもの。父の遺伝子をしっかり引き継いでいるようだ。
「桂樹。おまえ、せっかく近くに住んでいるのだから、これからも定期的に、俺と一緒にホッピーを飲まないか?」
呼び捨てになっていた。話しているうちに、親近感が湧いてきたのだろう。
「いいですよ。浅井さんとなら喜んで」
ホロ酔い気味の桂樹くんが、赤くほてった、まだ幼さが残る顔を俺に向ける。
「曜日を決めよう。大学の勉強も忙しいとは思うけど、どの日がいい?」
「水、木、土曜日をはずしていただければ大丈夫です。水、木はバイト、土曜日は彼女とのデートがあるので」
「おまえ、彼女がいるの?」
女性に縁のないイメージがあったので、ちょっと意外な気がした。
「土浦で保育士をしている、僕よりひとつ年上の女性です。エッチどころか、まだ、キスもしていませんけど」
真面目な桂樹くんとは思えない発言に驚く。アルコールの影響で口が滑らかになったようだ。
「俺は毎週のように彼女のアパートに泊まっている。エッチなんて当たり前にしているけどな」
俺もおしゃべりになってきた。これでは、人のことが言えない。
「僕よりも数段上ですね! 僕も早く、そこまでいきたいです!」
桂樹くんが照れ笑い。キスをしていないというのは、本当のことだろう。
彼女との関係が今後、どう展開していくのかが楽しみだ。
「それでは、俺たちの飲み会、金曜日でどうだ?」
「OKです。ホッピーに興味のある友人が大学にたくさんいますので、今度、ここに友人を連れてきてもいいですか?」
「もちろんだよ」
通信販売で、ホッピーをたくさん入手しておこう。焼酎やジョッキも余分に用意しておかなければいけないな。
「桂樹、これからもよろしく!」
「こちらこそ!」
俺たちはガッチリと握手をした。
人懐っこい桂樹くんの笑顔を見ると、気持ちが和む。彼の存在が、杉本さんを失った悲しみで傷ついた俺の心を癒やしてくれるような気がした。