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『ホッピハッピと輝く』 渡辺鷹志

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 三人は曲に合わせて、一糸乱れぬダンスを披露した。
 独特なテンポの曲、個性的な歌声、そして、なんとも不思議なステップで踊る妖艶なダンス……ファンの目は三人に釘付けになった。
 ホッピハッピのライブが始まった瞬間、酒井は「来た!」と思った。酒井はずっとこの歌とダンスを直接自分の目で見たかったのだ。酒井はぞくぞくして鳥肌が立っているのを感じた。三人の妖艶で魅力的な歌声とダンスに、まわりのファンと同様に目を離すことができなかった。
 酒井が三人をじっと見つめていると、歌の合い間に突然三人がグラスを掲げて「ホッピー!」と叫んだ。
 酒井は一瞬「えっ、何だ?」と戸惑った。
 すると三人の掛け声に合わせて、ファンがそれぞれのグラスを掲げて「ハッピー!」と叫んだ。酒井の隣にいた大麦も同じように叫んだ。
 酒井はびっくりしてまわりを見た。どうやら、これはホッピハッピのライブの合言葉というかお決まりらしかった。
ホッピハッピが、曲の途中でグラスを掲げて「ホッピー!」と叫ぶのに合わせて、ファンが同じくグラスを掲げて「ハッピー!」と答えるのだ。ひとつの曲で5回ぐらいはこのやり取りがあるらしく、10曲歌うと50回、20曲だと100回はやることになる。
 ただ、ホッピハッピの三人もファンも、何十回やろうと全く飽きることなく、楽しそうに「ホッピー!」「ハッピー!」と叫んでいた。むしろ、回数を重ねるごとに、息も合って声も大きくなっていった。一回ごとにホッピハッピもファンも、全員が幸せそうに笑顔で叫んでいた。
 酒井は最初は少しとまどっていた。しかし、脇にいた大麦が嬉しそうに叫んでいるを見て、徐々に声を出すようになった。
 酒井は一回叫ぶごとに、自分の気持ちがスッキリして、さらにリラックスして幸せな気持ちになっていくのを感じた。最後には、酒井は会場で一番といっていいくらいの大声で叫んでいた。
 酒井は、ときどき会場にいる観客の顔を見た。全員が、ホッピハッピが歌っているときは熱狂して歓声を上げ、そして、曲と曲の合間にはひと息ついてホッピーをおいしそうに飲んでいた。
 酒井の目には、ステージの上の三人がとにかく輝いて見えた。元気よく踊る姿は見ている人を元気にし、独特の歌声と妖艶なダンスはファンをとりこにした。
 その三人を見て熱狂しているファンも輝いていた。全員が幸せそうな顔をしていた。
 酒井は脇にいる大麦の顔を見た。30歳過ぎてアイドルのライブで大声で叫んで汗をかいたその顔は、もちろんさわやかとは言い難かったが、その表情はすがすがしさと満足感に満ち溢れていた。酒井はこんなに充実した表情をした大麦を見るのは初めてだった。
 そういう酒井も、自分がこれほど興奮して、熱狂するのは本当に久しぶり、いや初めてだった。
 ライブはいよいよ最後の曲を迎えた。最後の曲はこれまでの曲と違って、バラードのようなゆっくりとしたテンポの曲だった。三人はそれをしっとりと歌った。
 最後の曲を歌い終わると、ホッピハッピは、手にしていたグラスに入っているホッピーを全部飲み干して下に置いた。そして、ファンに向かって一礼すると幕が下りてきてライブが終了した。これもライブのいつもの終わり方のようだ。

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