俺は足をもつれさせながら、倒れるように同僚の胸に倒れるように飛び込んだ、
そいて、肩を大きく上下させながら、バックパックを開けてホッピーを取り出す。
「間に合ったか…?」
同僚は少し固まった後、首を縦に横に振った。
「結局、足りなくても特別に出店できたんだよ」
「え…」
気が遠くなった。
「全然、お客さん来なかったんだよ…」
「そうか…」
「でも、見てみろよ」
同僚は俺の体を起こして、一つのブースを指さした。
行列が出来ており、大勢の人々が『HOPPY』と印字されたグラスを片手に持っている。
「Hoppy!」
あちこちで、その掛け声が聞こえ、ホッピーを飲んでいる。
「大宣伝だよ」
同僚が笑ったので、俺も笑ってしまった。
「そっか」
向こうに、あのじいさんと少女が見えた。
「おーい!」
じいさんと少女をこちらに呼んだ。
少女は嬉しそうに俺の手を握った。じいさんは、どう声をかけて良いのか分からないみたいだ。
「ちょっと待って」
俺は自社ブースまで足を引きずって行って、キンキンに冷えた焼酎の入った紙コップを持って来た。
そして、俺が日本から持って来たホッピーの栓を開け、紙コップに注いだ。
「日本のホッピーだ!」
じいさんに突き出した。
じいさんは、苦笑いをしながら紙コップを受け取って飲んだ。
俺はその反応を凝視する。
「くぅー」
じいさんはそう言うと笑顔になって、俺に手を突き出した。
俺はそいつを握り返した。
それを見ていた片手にホッピーを持ったお客さんたちから拍手が起きた。
「ホッピー! ホッピー! ホッピー!」
再び大合唱。
嬉しかった。
俺も一緒になって声を出し、踊る。
じいさんも少女も、みんなも踊る。
大成功だ。
気分を良くしていると同僚が言いにくそうに、俺の名前を呼んだ。
「何? どうしたの?」
「社長に報告したら、返事が来た」
「心配してくれてたんだな。で、何だって?」
「自分で読んでくれよ…」
俺に携帯を渡し、同僚は俯いた。