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『デュッセルドルフへ行け』室市雅則

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「デュッセルドルフへ行け」
「へいっ!」
 ってなもんで、ホッピーの瓶と『HOPPY』とプリントされた黄色のハッピをカバンに詰め込み、会社をすっ飛び出て、タクシーを捕まえ、家に戻り、パスポートだけを引ったくり、着の身着のままのスーツ姿で、成田に向かい、11時に飛び立って、同日の16時にデュッセルドルフ空港に到着。

 俺の勤める会社が、デュッセルドルフのオクトーバーフェストに特設ブースを出展する。
 ビールの祭りで、ビアテイスト飲料を提供するのが前代未聞の挑戦ということで、ちょっとしたニュースにもなった。
 会社的にもホットな話題であり、俺たちのホッピーが本場で、どこまで通用するのか楽しみにしていた。
 そして、今朝。
 普通に出社した二分後、社長が我が社の商品『ホッピー』を一本、手にして俺の前に駆け込んできた。
 出展をするのに、どうしても『一本』足りないらしい。
 たった一本であるが、規定やら条件やらで、どうしても必要だということ。だが、今から空輸便で送るのでは、到底間に合わない。
 そこで、会社に残っているメンバーで英語が得意だと認識されている俺に白羽の矢が立った。だが、正直に言うと、俺は駅前留学しかしていない。
 面接で、『留学をしていました(一拍置いて)駅前ですけど』とひょうきんな演出をかますつもりが、一拍を置く前に、面接官が「おぉ」となって、『駅前』のオチをつける間も無く、「採用」となってしまったのだ。しかも、駅前留学だって、無料のお試し期間だけしか、経験していないし、海外にも行ったことがない。
 すみませんでした!
 と、謝れる状況でなく、一応、取っておいたパスポートが役に立って一安心。ホッピーを届けるだけなら、楽勝でしょ。初めて海外に行ける、ラッキー、「へい」ってな具合で向かった。

 機内のモニターに『ウルムチ』なんて出て来た時には、おぉっと思ったし、空から初めて目の当たりにした外国の陸には感動をした。
 見渡す限り緑しかない平原にぽつねんと家があったりして、自分の国から遠く離れたところに存在する人の営みがあることに、胸が熱くなった。
 そして、感動と緊張を抱いたまま己の足でドイツの地を踏んだ時は、人間として一皮向けた気がした。
 俺は海の外に行ったことがあるんだと。
 日本の夜明け、ホッピーの夜明けは俺の肩にかかっているんだぞと。
 意気軒昂で、空港を出ようとすると税関職員が俺のバックパックが開けた。
 今回のミッションの命『ホッピー』が男性ドイツ人職員のアラームに反応をしたらしい。
 さすがビールの本場だ。
 いや、その前に、俺は替えのパンツ一枚も持って来なかったから、バックパックの中には、ホッピーとハッピだけしか入っていない。
 そりゃ、こんな身軽じゃ怪しいだろう。ちょいとコンビニまでとは違うのだから。

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