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『デュッセルドルフへ行け』室市雅則

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 デュッセルドルフは日本人が多く住む街らしい。だから、我が社もチャンスがあると考え、今回のイベントに挑戦をした。
 ってことは、日本人がそこいらにいるはず。この空港にもね。と辺りを見渡しても、日本人らしき姿は全く見えない。
 その代わり、クラクションが聞こえた。
 見ると先ほどの赤鼻のじいさんがオンボロのベンツから手招きをしている。少女は助手席で笑っている。
「ホェア ゴー?」
「オクトーバーフェスト。急いでいます」
 じいさんは相好を崩し、握手を求めて来たので、分厚い手を握った。そして、後部座席を指差した。どうやら乗っていけと言っているようだ。
 知らない人についていってはダメと散々言われていたが、この二人が俺を連れ去ろうとしているようには思えないから、乗り込んだ。

 車が空港から出た。
 路面電車も走っていて、のどかな町が広がっている。
 本当に外国に来たんだな。
 じいさんがハンドルを握りながら、片言の英語で話しかけてくる。
 俺も片言で返す。
 片言同士だと見事に通じるのが不思議だ。
「もうビール飲んだか?」
「いいえ」
「何。ちょっと待って」
 じいさんがそう言うや、車を路肩に止め、運転席から出て行ってしまった。
「ちょっと、ちょっと」
 俺の焦りも知らずに、じいさんはのんびりしているし、少女は微笑んでいる。
 しばらくすると、じいさんは紙コップと紙皿を手に戻って来て、俺に差し出した。
「これが、デュッセルドルフのアルトビールとカリーヴルストだ!」
 ソーセージとカレーの香ばしい匂いに鼻がヒクつき、喉が鳴った。
 俺はじいさんから受け取った。
 じいさんも少女も俺が口にし、感想を言うのを待ち構えている。
「いただきます」
 日本語で言って、ビールを喉に放り込んだ。
「くぅー」
 ビールの苦味が残っているうちにカリーヴルストを口に入れる。
「うわぁ」
 じいさんも少女も、感嘆する俺を見て喜んだ。
車が動き始めると同時に、アルトビール、カリーヴルスト、感嘆詞。アルトビール、カリーヴルスト、感嘆詞。これを繰り返して、コップと紙皿を空にした。
 美味かった。これが本場の力かと驚くコンビネーションだった。
 来て良かった。あとはシャワーを浴びて…
 違う。違う。俺はまだ任務を遂行中なのだった。
「君はビールを飲みに来たのか?」
「いや。ホッピーを売ります」
 そう言っても、やはりホッピーが何かは理解されなかった。

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