『まだ飲まないの?』の『うぉう』だ。そろそろジュンちゃんの『うぉう』の意図する所が分かるようになって来た
僕も唇をすぼめて、ホッピーを吸い込んだ。
生温さが上顎を滑る。すぐにホッピーの軽やかな苦味と炭酸、そして、アルコールが口中に広がった。それを飲み込むと、温かいから自分の体の中で自然と溶けていった。
思わず僕も目を閉じた。
「うぉう」
ジュンちゃんがそう言って、二口目を飲んだ気配が分かったので、僕も二口目を飲んだ。
大きく息を吐いて、目を開けると僕の方を見ていたジュンちゃんと目が合った。
シジミ目の角が少し溶けていて、ご満悦なのが分かった。
ジュンちゃんは再びジョッキに口を付けて、飲み切ると、焼酎のボトルを手にして、二杯目を作り出した。
やはり焼酎の量はジョッキの半分。そこにホッピーを注ぐ。再現映像かのように先程と同じ表面張力ギリギリホッピーが出来上がった。そして、どうやらホッピーは空になったようだ。
僕も二杯目に入ろうとジョッキを飲み干すと、ジュンちゃんが焦げクリームパンの手を差し出した。今回も作ってくれるらしい。
厚意に甘えると、こちらも、やはり同じものが出来上がった。職人芸だ。
互いに二杯目に口を付けるとペースはゆっくりとなった。
太陽は顔を出し、すっかり明るくなっている。
無言だから、通りを走る車のエンジン音がよく聞こえる。乗用車かトラックかバスか判別できるくらいに。
何を話そうかと考えていると、僕の腹が鳴った。
さっきから僕の体は鳴ってばかりだ。
おもむろにジュンちゃんはキャベツを手にし、葉を二枚向いて、一枚を僕に差し出した。
『食べろ』と言うことだと分かったが、洗ってもいないキャベツをそのまま食べるのは抵抗があった。ジュンちゃんの手が黒いのは両面だし。
躊躇していると、ジュンちゃんは自分で先に一枚を食べ始めた。葉が分厚いから、噛むたびに時代劇で人が斬られる時みたいな音がする。やけに美味そうに聞こえた。同時に、キャベツの『葉っぱ』って言うけど、キャベツって葉の集まりだろ? だから、キャベツの『葉』を全部剥いたら、キャベツ本体ってやつはどこに行くのだろうと思い浮かんだ。酔っているのだろうか。
ジュンちゃんからキャベツの葉を受け取って、僕も食べた。
キャベツの味がした。キャベツ以外何者でもありませんけど、すみませんって味。
それをホッピーで流し込む。
キャベツが甘くて美味かった。
結局、無言のままで二人してホッピーとキャベツを交互に楽しんで、あっという間に二杯目を飲み干した。
ジュンちゃんは立ち上がると、まるで几帳面な人のように空になったホッピーの瓶を面を揃えた。
「うぉう」