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国際短編映画祭につながる 短編小説「公募」「創作」プロジェクト 奇想天外 BOOK SHORTS

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『ファースト・ホッピー』柿沼雅美

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「初恋って言っても幼稚園のときなんで全然どんな子かとか覚えてないんですけど、彩りが加わるって書いてさやかって読むらしくて。あ、漢字の意味は小学校でやっと分かった感じでしたけど、なんかその名前の響き聞くと思いだしちゃうんですよねー」
「へー、でもそんなことしてたらお客さんに彼女が嫉妬したりしません?」
 友里がずいずいと聞いていく。こういうところがすごいなぁといつも思う。
「あー彼女もう2年くらいいないんですよ」
 えー、と友里がびっくりしてみせると、カウンターの奥からレモンサワーとホッピーが置かれた。
 麦芽発酵飲料HOPPYとプリントされた茶色いビンに、私はほんとにビールそっくりだねぇと言った。おいしいのかな?と心の中で思ったのを友里と店員にばれたのか、おいしい飲み方がちゃんとあるんだよ、と二人が交互に言った。
 店員はカウンターの中で手を動かしながら友里がホッピーを注ぐのを見ている。私も見てみると、桜の柄にHOPPYという英字、そのしたにカタカナでホッピーと書かれていて、字体が漫画のようだ。昭和のような気もするし異国のもののような気もする。
 一緒に置かれた氷入りのジョッキには焼酎が入っていて、友里はゆっくりジョッキにホッピーを注ぐ。小さく白い泡が立ちはじめ、表面がせりあがってくる。
 それを見つめながらレモンサワーをぐっと喉に入れる。喉なのか肌なのかわからないけれど、今の自分がとても乾いているように感じる。
「え、レモンサワー一気飲み?だいじょうぶ?」
「全然だいじょうぶ」
 そう言って、ぐぐぐっと飲んで、婚活やら仕事やらを吐き出すようにふぅーーーーーっと息を出し切った。
 これ中多めだね、という友里に、少ないほうがよかったですか、と店員が答える。私がジョッキに注ぎ終わるのを見ていると、焼酎を中と言って、ホッピーを外と言うんだと店員が教えてくれる。
「彩夏はほんとに知らないんだねぇ、飲んでみたら?」
「いいよ、ビール苦手だし」
「あ、じゃあレモンサワーまだちょっと残ってますけど、コーラとホッピー頼んで飲んでみてくださいよ」
「え?コーラ?」
 私が聞くと、マジで?と友里が言う。
「いやいや、大真面目ですよ僕。なんせホッピーでハッピーのまわしものですから」
 店員が笑って言うと、ダサッと友里が笑う。じゃあ騙されたと思って、とコーラにホッピーを注文し、友里がしていたようにジョッキのコーラにホッピーを注いでいく。さっきよりもぷつぷつと早く泡が出て、シュワシュワが耳にも届いた。
「わ、冷たっ、え、これがホッピー?超おいしい!コーラに深い苦みが出て高級なコーラ飲んでるみたい」
「もうコーラなんじゃんそれ」
 友里が笑う。
「ファースト・ホッピーですね」

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