「しかも、パーティーで出会ったのが運命だったんだ、とか、パーティーよりも二人きりのほうがいいでしょ、とか、パーティーでは大勢の女の人に仕事の話とか聞かれちゃって参ったよ、とか大声で言うの。わざとだと思うんだよね、裕福でパーティーに参加して女性にモテてるってまわりに聞こえるように言ったんだと思うんだけど、だって、婚活パーティーだよ?ありえる?そりゃ女の人は仕事やら家族やらいろんな話してくるでしょうよって」
友里がスカッシュを吹き出しそうになって、やっと私も笑うことができた。
「勘違いが過ぎるんだわほんと。しかも唯一楽しみにしてたワインがまずくて、もうなにしに行ったんだか」
「で?」
「でって?なにが?」
「なにがじゃないよ、彩夏にそんなにアピールしてるくらいなんだから次のデート誘いがあったんじゃないの?」
デートという言葉と男の姿があまりに合わなくて、あぁあれはデートだったのか、と今更思う。
「いや、言われる前に断った」
「あ、そうなの?思い切ったね。ほかの駒もいないのに」
「うるさいなー、そうだけどさ、さすがに昨日のそんな人と結婚なんて考えられないよ。まして付き合うなんて考えもしない。食事終わるカウントダウンしてたもん、あと何品で解放されるあと何杯で解放されるって」
「がんばったねぇ~」
友里が手を伸ばして私の前髪を撫でる。面白がって聞いてくれる友達がいてよかった、と思う。
「スムーズに断れてよかったね」
「友里は断れないことあった?」
「断れないっていうか。私から断ろうとしたら察したのかなんなのか逆ギレしてきた人はいたよ。私より5歳上くらいの人」
こわーと小声で返した。
「こわいっていうかウザかった。なんかさ、忙しい時間をとってわざわざ都心まで出てきてあげたのに、あ、群馬県の人だったのね、で、わざわざ都心まで来てやったのにって言って、だいたい高そうなバッグ持ってるけど身の丈に合ってないし、気取ってずっと取り繕って見えるし、キミの話はおもしろくないし、一緒に生活するビジョンが見えないんだよ、って言われたことある」
「ひえぇ」
「しかも店の前で大声で」
「ひええええ、ショックだわそれ」
「いやなんかショックっていうか唖然だよね。まだ3回しか会ってないのにってその時思ってたけど、デートみたいなワクワクする気持ちもなかったし、相手もパーティーでマッチングしたから無理してたんだなって思って」
「そっかぁ、友里えらかったね」
「全然えらくないでしょ、はは。彩夏は昨日はなんて断ったの?」