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『ローズ・ハッカ・ジンジャー』柿沼雅美


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 頭の上から言う豊を斜めに見上げながら、うんちょっと由香たちと話したこと思い出して、と返した。
「あ、そういえばどうした、由香ちゃんの、合コン相手に恵比寿で振られたやつ」
「あぁあったね! 由香の話聞いて、私たちムカついちゃってさ。あ、紗英と恵美もってことね」
「うん。いつものメンバーね」
「そう。それで、色々考えて、くさや買うのもいいし芳香剤頭からかけるのもいいしトイレの消臭スプレー目に吹き付けるのもいいんだけど、いっぺんにやったらくさやの匂い意味なくね? って話になってさ」
 たしかに、と豊が笑う。むしろ消臭スプレーの効果の大きさが分かっちゃうやつ、と言って二人で、はははと声を合わせた。
「とりあえずトイレスプレーはやりたいよね、ってなったんだけど、由香がもう会う予定ないしってので保留中」
「なんだーそっか、ほんとに女3人でそれやったら怖いけど見てみたい」
 豊が言い、私も、マジでやってみたい、と返した。
「俺のことちゃんとその子たちに話したら、俺がそれやられるのかな?」
「ん? あぁ、不倫だとかなんだって?」
「うん。まぁ別にいいんだけどね」
「いいんだ?」
「だって、そうされるほどのことなんだろうなって思うし」
「思ってるんだ」
「うん。でも、美樹のこと大事に思ってるし、本気で」
「うん。私も好きだし、しょうがないね。でももっと一緒に住んだりできるように頑張ろうね」
 私が言うと、豊は、いつもと同じように、笑って私の頭を撫でた。しょうがないね、で今日も終わってしまうけれど、しょうがないね、で全部終わらせるつもりは私の中にはないのだ。
 でも怖くなる。由香にも恵美にも紗英にも、ちゃんとした相手ができて、両親は歳を取っていって、私は豊とこのままで、これからどうなるんだろう。
「不思議だよねぇ」
 私が言うと、うとうとし始めていた豊が、眠そうなまぶたをちらちら浮かせて、ん? と言った。
「なんでもない。夜になるとさすがに涼しいからお風呂お湯ためていいかな」
「ん、いいんじゃない。俺も少しだらだらしたら入るから一緒に入ろ」
 うん、と返事をして、私は立ち上がって浴槽に栓をして、湯張りボタンを押した。
 セックスの気だるさが身体に軽く押し寄せてきて、私はしゃがみながら浴槽にお湯が勢い良く溜まっていくのを見つめた。

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