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『父親を待つ娘』前田雅峰


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「でも此の軌道はもう長いこと使われてないんだよね? だから道路で帰って来るんじゃないかな?」
「お父さん鉄道が好きだったから、帰って来るなら必ず此の軌道で帰って来ると思うの。軌道が動いてなくたって、線路の上を歩いて来るに決まってる」
「そうか、だから此処(ここ)で待つんだね。でもお父さんて、いつから家にいないの?」
 今度は女の子は暫く何も言わなかった。私が女の子から返事が返って来るのを諦めると、女の子は突然、
「一年の半分って、半年っていうのかな?」
 と私に問うた。
「うん、そうだよ」
「じゃあ、半年かな」
「ふうん。お仕事?」
「うん。出稼ぎって、お母さんが言ってた」
「そうか。元気で、無事に帰って来れば良いね」
「うん」
 斯(こ)んな、町から離れた集落だ。そういう事も有るだろうと思い、帰ろうとして私は立ち上がった。すると女の子が言った。
「おじちゃんは、町の人?」
「うん。まあ、そうだね」
「今日はどうして此処(ここ)来たの?」
「うん。おじちゃんは時々旅行するのが好きなんだ」
「旅行っていっても、何で斯(こ)んな所に?」
 私は、此の女の子は見た目よりも年嵩なのかと疑ったが、先刻一年の半分を何と謂うのかと私に質問した位だから矢張見た目相応なのだと結論し、素直にありのまま返事した。
「斯(こ)んな所? とても良い所で、旅行しに来るのに良い場所じゃないか。空気は綺麗だし、人もそんなに居ない。見渡す限り原野と牧草地だから気持ちも良いしね」
「でもおじちゃん以外、誰も斯(こ)んな所に遊びに来ないよ。知らない人、滅多に来ないからね」
「そうかな。町に住んでる人は休みの日に、結構斯(こ)ういう静かで人の少ない所に旅行に行ってるもんだよ。此処(ここ)でなければ、此処(ここ)以外の、此処(ここ)に似た様な場所にね」
「ふうん」
「ところで、お父さんの事は『お父ちゃん』って言って、お母さんの事は『お母さん』なんだね」
「うん」

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