「マヒロがいっぱい文書いてると、ママがすごい喜んでくれるでしょ。それがね、マヒロ嬉しくて。だからいっぱい書いちゃった。」
こんな小さい子が、私を一生懸命守ろうとしてる。
涙があとからあとから流れ続ける。背中をバンバンと押されているかのように、背中からドクドクと心臓の音が大きくなる。
前に抱きかかえたマヒロの温もりと、背中からの鼓動で、体中が熱くなるのがわかった。
私の大切なものはこれだよね、頭上から暖かい空気が私の体中を包む。
「あ、マヒロとママって、これに挑戦したね。」
マヒロは、読書感想文を指さした。
マヒロの読書感想文は、三日後に清書をして、完成した。
右上をホチキスで止めたそれを高価なものを扱うように、私たちはそおっとクリアファイルの中に入れて、マヒロのランドセルの中に入れた。
その夜、夏休みの初日から書いた原稿用紙をフラットファイルに日付が若い順から閉じこんだものをマヒロに手渡した。
マヒロは、最初のページからぺらぺらめくっていき、「うわっ。」とか「こんなこと書いたの。」とか口にしながら、つい二週間前からの仕事を懐かしんでいた。
最後に閉じこんだ手紙をみつけた。
「ママ、お病気なのに、ありがとう。」
小さい目の中に、涙をいっぱいためて、マヒロは私を見た。
「ママね、最初読書感想文ちゃんとできるか、自信なかったの。でもね、一日、一日ってマヒロが課題をこなしていって、作品になったでしょ。マヒロが課題をこなす度に、ママの心の中に元気玉が一つずつ増えていってね。今ね、ママも頑張ろうって気持ちでいっぱいなの。」
私は、頬を伝う涙を両手で拭って、笑顔を作った。
「マヒロのおかげ。」
マヒロは、ぶんぶんと顔を横に何回かふると、
「マヒロはね、ママが教えてくれて、それで、いっぱい文書くと、ママがすごい喜んでくれて。それがすっごい嬉しかったの。」
マヒロは、私の肩に両手をまわすと、「読書感想文のおかげだね。」と、笑った。
「ママ~」
学童に迎えに行くと、マヒロは飛んできた。
「ビックニュースだよ。」
学童の先生が、ランドセルをもって近づいてくると、
「お母さん、マヒロちゃん今日はずっと早く迎え来ないかなって心待ちにしてたのよ。」
学童の先生から手渡されたランドセルを抱えると、下についているフックを開けるとくるくるまるまった白い紙を出すと、私の顔の前にかざすと、「じゃーん。」と紙を広げた。
「はじめての賞状。」